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皆聖・本編投下スレ

1 :名無しさん :08/09/04 20:35:44 ID:aiHXnVEs
というわけで、まずはスレ立てから。

2 :名無しさん :08/09/04 20:36:52 ID:aiHXnVEs
−8.


 水佐波市。
 首都圏から離れた場所に位置する、沿岸都市だ。
 山、森、海と日本の自然が全て揃った、静かな地方都市である。
 近年になって海上に埋め立て島を作るなどして開発が進んでいるが、
 その一方で昔ながらの漁村や住宅街も、しっかりとまだ残っている。
 時代の流れに伴って、少しずつ変化している――何処にでもある街。

 しかしそんな水佐波にあって尚、時の流れとは無縁の存在があった。

 住宅街から離れて歩くこと暫し。
 右に左に傾きながら、だらだらと何処までも続く坂道がある。
 その坂の向こうが見えるほどまでに登れば、其処からは土塀と竹薮が左右に並んでおり、
 まるで時の流れが止まったかのような印象を、見るものに与える風景が続く。
 水佐波の海上都市における発展や、陸上都市の衰退からも忘れ去られた場所。
 そんな山に程近い区画に、時代から取り残された、小さな古書店がある。
 
 老人が目指しているのは、まさにその店であった。

 そう、彼は老人だった。
 少なくともその一点においては、雰囲気に合った存在と言える。
 しかし着込んだ衣服が場違いだった。決定的なまでに場違いだった。
 何せ派手な花柄の木綿シャツ――つまりはアロハシャツなのだから。
 がらりと古びた戸を開けて店内に足を踏み入れると、店主の顔がすぐに見える。
 勘定台で煙管を噴かしていた店主が、実に嫌そうな顔をしていた。
 もっとも、この店の主はいつだって不機嫌そうなので、老人は特に気にしない。

「何しに来やがった」
「随分な言い草じゃな。折角本を買いに来てやったというに」

 呵呵と笑う老人に対し、店主――蔵間鉄人は眉間に皺を寄せた。
 甚平を着込み、煙管を噴かすこの男。
 いつ何時訪れても、山と詰まれた古書に埋まった勘定台に座っており、
 丸で店の一部とでも言うような佇まいをみせるが、外見は二十代半ば。
 だというのに、ともすれば目前の老人よりも年寄りめいた雰囲気がある。
 奇妙な人物である。ただ一言で表すならば、だが。
 
「とはいえ、そいつは建前でな。あんたに頼みたい事があるんじゃよ」
「勘弁してくれ。俺ァそういうのとは手を切った」
「あんたの事だ。どうせ調べて、少しは話を聞いておろう?」
「誰が好き好んで戦争なんぞに関わるか。あんなのは一度で十分だ」
「あんたの存在を見逃してやってたのも、こういった時の為なんだがのぅ……」
「勝手に恩を売った気になるんじゃねえ。俺ァ元からこの街の人間だ」
「しかし、事はわしだけに留まらんぞ。わしの息子。あんたの大事な娘子も――」
「くどいぜ"坊"。手前の尻は手前で拭え。こっちに押し付けるな」
「………そうか。なら邪魔をしたな」

 そう言うと老人は、近場に詰まれた古書から一冊を手に取った。
 革張りの表紙の、随分と古びた洋書である。ただし銘は無い。
 いかにも曰くありげな本。
 だが老人は躊躇せずにページを開き、流し見てから頷いた。

「こいつを貰っておこう。お幾らかな」
「1000円だ。とっとと出てけ」


3 :名無しさん :08/09/04 20:37:45 ID:aiHXnVEs
 老人が静かに戸を閉めて立ち去ると、鉄人は苦虫を噛み潰したような顔になる。
 要するにますます不機嫌な顔になった、というだけの事だ。
 彼の平素の顔を見て感情の度合いを汲み取れる者は、そう多くはいない。
 苛立たしげに、かつりと煙管を煙草盆に叩き付ける。
 ――それにしても厄介な事になった。
 戦争だと? 糞ったれめ。

「………………やれやれ」

 実に大儀そうな仕草で立ち上がると、彼は古書の山の中へと手を突っ込んだ。
 しばらく紙束を引っ掻き回して手繰り寄せたのは、これまた時代がかった黒電話である。
 滅多に此方から掛けることも無く、また掛かってくる事も無い代物だった。
 何せ用のある相手は、好き勝手に店先へやって来るのだ。特に必要も無い。
 ――が、今回は少々事情が違った。
 あの娘の事だから今日の夕方にもまた来るかもしれないが"かも"では困る。
 確実に呼び出して、しっかり釘を刺しておかねば。

 ジーコロロと古臭い音を立ててダイヤルを回し、受話器の向こうで呼び出し音が鳴ること暫し。

「…………。ああ、夏海か? 俺だ」
『あ、兄さん? もー、あたしの携帯なんだから、あたし以外出るわけ無いじゃん』
「そうかい? どうにも俺ァ、そういうのが良くわからんのだがね」
『まあ、兄さん機械音痴なのは昔ッからだけどさ。で、どうしたの。電話するなんて珍しい』
「悪いが、後でちぃとウチの方に来てくれないか?」
『良いけど……何か用事?』
「んにゃ。別に手間は取らせん。すぐに済む事だが、話しておかなきゃならん事ができたんでね」
『わかった。それじゃあ夕方ぐらいに行くよ。今、みことと遊んでた所でさ』
「あいよ。気ィつけてな」

 がしゃりと受話器を電話機に置く。
 戦争なんてのは随分と前に終わった筈だってのに。
 外から響くのは、蝉の鳴き声。

「半世紀経っても変わらないのは自然くらいだと思ったんだがねぇ……」



4 :名無しさん :08/09/04 20:38:23 ID:aiHXnVEs
−7.

 何年経っても自然というのは変わらないものだ。

 初めてこの風景を見たのは、確か冬だったように思う。
 荒れ狂う風。岩をも打ち砕かんと迫る強烈な波。
 寒さ自体には慣れていた。慣れざるを得なかった。そういう環境に彼はいた。
 吹き荒ぶ雪の痛みも、足を絡め取る泥の重さも知っていた。
 それこそが冬なのだと、彼は思っていた。
 だが――これはどうした事だろうか。
 足を踏み入れる事など生涯想像しなかっただろう極東の冬。
 その冬は、彼にとって想像もしない表情を見せてくれている。
 だが驚くべきは、それだけではない。
 人類の技術が作り出した船ですら、いとも簡単に破壊できるだろう波の中にあって、
 それを物ともせずに泳ぎ続ける魚たちの存在ときたら!

 船の甲板に立っていた彼は、呆然とその海を見つめていた。
 全身を濡らす水飛沫を気にする余裕は無く、ただ只管に圧倒されたのを良く覚えている。
 長い年月を生きてきたつもりであっても、未だに自然は彼の心を奮わせた。
 自然、或いは地球という惑星は、それほどまでに雄大かつ強大なのだ。
 人としての範疇を多少外れた道に入ったからこそ、それが良くわかる。
 だが、あれから長い年月が過ぎた。
 今は冬ではない。
 
 ――夏。

 かつて荒れ狂っていた海は、実に穏やかに凪いでいる。
 美しく澄んだ海。燦々と光を降らせる太陽。遠くから聞えるウミネコの声。
 波によって飛び散った水飛沫が、きらきらと煌き、彼は目を細めた。
 目を細めれば海中を行く

 季節は巡り、月日は過ぎ、星辰の順列も変化した。
 汗ばんだ胸元に風を送り込むべく襟元を緩め、更にそれを実感する。
 変わらないのは自然と、自分くらいのものだ。
 かつてと同じ景色を甲板の上から眺め、彼は皮肉げに口元を歪めた。
 人も時代も移ろい行く。
 祖国は滅び、かつて友と呼んだ男達は皆逝き、傍らにいた女も消えた。
 ――いや、消えてはいないのか。

「閣下、そろそろお時間ですが……」

 不意に背後から聞えた声。凛とした鈴のように涼やかな、女性の声。
 "閣下"と呼ばれた彼は、ゆっくりと頷いて其方へと振り返る。
 其処には、声から想起されるのと寸分違わぬ雰囲気を纏った少女が立っていた。

 肩まで伸ばされた、雪のような――彼にとって雪とは灰色だった――色合いの美髪。
 年端もいかぬ娘でありながら、研ぎ澄まされたように鋭い紅色の瞳。
 人為らざる者の美しさ。大昔の人間ならば魔女と形容するだろう美貌。
 身に纏うのが黒衣であるという点もまた、そんな印象を強める一因だ。

5 :名無しさん :08/09/04 20:39:07 ID:aiHXnVEs
「もしかしてお邪魔でしたでしょうか?」
「いや、時間を忘れていた。呼びにきてくれて助かったよ、ヒルダ」

 少女の姿を一瞥すると、彼は小さく首を横に振って応えた。
 ヒルダ――ヒルデガルト・フォン・ノイエスフィールは、それを聞いて安心したとばかりに笑みを浮かべる。
 花の綻ぶような微笑。氷のような姿と裏腹に、何処か暖かみのある表情であった。

「船内に戻る前に、貴官も一度見ておくと良い。あそこが我々の"戦場"になる」
「――ミナサバですか。聞いていたよりも、美しい土地なのですね」

 海上からも良く見える。
 美しい海。見事に広がった森林。雄大な山。
 漁村のように見える沿岸部に牧歌的な住宅街。
 橋を渡れば近代的な海上都市と、浜辺にはリゾート区域。
 夏という行楽シーズンであるにも関わらず、記録によれば其処まで旅行客がいるわけでもない。
 こんな見事な自然に囲まれているのに、平凡な地方都市に過ぎないというのは信じがたかった。

「拠点設営が終わり次第、貴官には向こうに上陸して貰う事になる。
 其処からは精一杯働いて貰うぞ。覚悟をしておくと良い」
「はッ」

 カチリと踵を合わせての見事な敬礼。
 少女の容貌には不釣合いな仕草であるが、実に様になっている。
 その様子を見て、彼の巌のような顔にも僅かに笑みが浮かんだ。

「ではそろそろ戻るとしよう。到着までは間があるのだし、珈琲を飲むくらいの時間はある筈だ」
「宜しければ、私もご一緒して良いでしょうか?」
「構わんよ。ヒルダは珈琲でなく、ココアだったか」
「はい、よく練った物を好んでいます。それでしたら、先に行って準備しておきますね」

 弾けるように駆け出したヒルダが船内に姿を消すと、彼の顔から笑みが消えた。
 長い年月を経た岩。無骨な表情は、それ相応の苦労と思考を伴ったものだ。
 彼は最後にもう一度、己の"戦場"となるだろう土地を睨み付ける。

「鷹は舞い降りた――、か」

 海から降りるのでは締まらんな。冗談とも本気とも取れぬ呟き。
 そしてナチスと呼ばれた組織の生き残り、亡国の残党が集った場所、
 度し難い大馬鹿者達の集団、秘密結社――グラムヘイム、
 その極東支部長ヴィーダー・ベレーブング大佐がハッチの中へと潜り込み、
 かくてUボートXI型潜水艦は、深く静かに水底へと潜行する。

 ――――――どこまでも、どこまでも。



6 :名無しさん :08/09/04 20:39:58 ID:aiHXnVEs
−6.

 ――――――どこまでも、どこまでも。

 慣れ親しんだ街並みの中にある、一直線に伸びる道。
 時々、本当にどこまでも歩いて行けると思ってしまうから、困る。
 高波夏海にとっては、水佐波の海こそが其れだった。
 潮の匂いと、遮る物の無い紺碧。いつまでも潜っていられそうだ。

(まあ、無理なんだけどさ)

 肺が空気を求めて騒ぎ出す感覚に、人間が陸上生物である事を思い知らされる。
 どんなに海が大好きで、ずっと遊んでいたくても、海は自分を拒絶する。
 ひょっとして自分は海に嫌われてるんだろうか、なんて。
 子供ながらも真剣に悩んだものだった。

(結局、答えなんかでなくって。お婆ちゃんに聞いたんだよねー)

 海には海の都合があるんだよ、と祖母は優しく教えてくれた。
 だから人間の都合で無理なお願いをしちゃいけないんだ、と。
 友達の嫌がる事をすれば喧嘩になるだろう?
 喧嘩するのが嫌なら、海のお願いを聞かなきゃならない。
 だって海は、みんなに魚をくれたり、普段から一杯頼みを聞いてくれるんだから。

(ありがとう。――またね)

 しなやかな脚で力強く水を蹴り、上へと昇る。

 そう。それがお婆ちゃんから最初に教わったこと。
 海の傍で暮らすなら、忘れちゃいけない考え方。
 夏海にとって、この海は大事な友達で、故郷で。
 だから水佐波が大好きなのだ。

 しばらくすると水面越しに、太陽がきらきら輝いているのが見えた。
 息を止めたまま一気に其処を目指し、そして――。

 ――世界が切り替わった。

 今まで青一色だった世界に、他の色が戻ってくる。
 肺一杯に空気を吸い込んで、吐き出して。

「あぁもう気持ち良いなぁーっ」
「ほんと、夏海さんは海に入ると楽しそうですわねぇ」
「そりゃもう。水を得た魚って奴よ」

 先に海面まで上がってきていた友人――志那都みことと笑いあう。
 短い赤毛、健康的に日焼けした肌という夏海と対し、艶やかな黒髪と、雪のように白い肌。
 加えて常々夏海がけしからんと思っている、女性的な丸みを帯びた体型もまた対照的だ。
 どうしてあんな大きなものを二つもぶら下げているのに、泳ぎがこんなに速いのだろうか。
 水泳部部長から『水佐波のクロマグロ』なる有難くない渾名を頂いた夏海に対し、
 納得のいかない事に、彼女はそれに勝るとも劣らない速度を出せるのだ。
 世の中って不公平だと夏海は思う。

7 :名無しさん :08/09/04 20:41:01 ID:aiHXnVEs
「でも部長も来れば良かったのに。夏に海で泳がないなんてバチが当たるよ、ほんと」
「そりゃあ部長さんは海が苦手ですもの。それに夏海さんは季節なんて関係ないじゃない」
「まぁねー」

 ざばざば水を掻き分けて――水中と水上とじゃ泳ぐ気分も大分違うもんだ――砂浜に上がる。
 日光に晒されて熱を持った砂の感触が、海水で冷やされた足の裏に心地良い。
 水佐波も一部の砂浜がリゾート開発されているとはいえ、この辺りはまだ昔ながらの漁村だ。
 盗まれる心配もないと砂浜に放り出したスポーツバッグからタオルを取り出し、水滴を拭い取る。

「……あれ?」

 と、夏海は自分の手の甲に奇妙な痣があるのに気がついた。
 はて何処でぶつけたのだろうと考えても、思い当たる節が無い。
 恐る恐る触ってみても痛みは無いし、怪我と言うほどの事もなさそうだが。

「まあ良いか。すぐに治るでしょ」
 特に気にする必要もないと頷いて、彼女はそれを意識の外に押し出した。
 さて今は何時だろうかと時間を確かめるべく携帯を取り出そうとして――

「あ、っと、っとととと、ちょっと待ってね、と」

 突然、携帯が震えだした。
 マナーモードにしたままだったと、慌てて携帯を開いて受信する。
 続いて聞えてきたのは実に馴染み深い、酷く落ち着いた男性の声だった。

『ああ、夏海か? 俺だ』
「あ、兄さん? もー、あたしの携帯なんだから、あたし以外出るわけ無いじゃん」
『そうかい? どうにも俺ァ、そういうのが良くわからんのだがね』
「まあ、兄さん機械音痴なのは昔ッからだけどさ。で、どうしたの。電話してくるなんて珍しい」
『悪いが、後でちぃとウチの方に来てくれないか?』
「良いけど……何か用事?』」
『んにゃ。別に手間は取らせん。すぐに済む事だが、話しておかなきゃならん事ができたんだ』
「わかった。それじゃあ今から行くね。ちょっと、みことと遊んでた所でさ」
『あいよ。気ィつけてな』

「……珍しいなぁ」
 あの兄さんが電話してくるなんて滅多に無いんじゃなかろうか。
 パタリと携帯を閉じてバッグに放り込み、水着の上からシャツを羽織る。
 ――と、同じく水着の上から肩に服を引っ掛け、髪を拭いながらみことが声をかけてきた。
「どうかしたんですの?」
「あ、ごめんね、みこと。兄さんから着信が入っててさ」
「あらあら、殿方からの連絡だなんて。夏海さんも罪な女ですこと」
「別にそんなんじゃないってばー。普段めったに電話かけてこないんだもん、兄さんは。
 それにみことの方こそ、男子から人気あるじゃない。罪作りなのはどっちよ」
「わたくしは彼一筋ですもの。他の殿方なんてアウトオブ眼中!
 人の恋路を邪魔する野暮な方々はスポーツカーに撥ねられて死ぬべきなのですわー」
「はいはい、ごちそーさま」

8 :名無しさん :08/09/04 20:41:42 ID:aiHXnVEs
 くるくる回るみことに苦笑交じりに呟いた。まあいつもの事だ。
 みことと彼は、自他共に認める街一番のバカップル。
 そりゃあもう水佐波市全体を巻き込んだ大騒動の末の告白だったから、知らない者は誰もいない。
 というか毎日のようにイチャイチャしたり惚気話を聞かされてれば知らなくても慣れる。

「それでお兄さん、何か御用だったんじゃなくて?」
「うん。あたし兄さんに呼ばれてるから、今日のお茶会は抜けるね」
「あら、小日向さんがレーヴェンスボルンに呼んで下さったのに」
「ごめんねー。部長達にも謝っておいて」
「それでしたら折角ですし、お兄さんも連れていらしたらどうかしら?」
「んー……兄さん、出不精だからさぁ」
 頬を引っかいて苦笑い。もっと出歩けば良いのにとは常々言っているのだが。

 ――と、不意に排気音が響き渡った。
 視線を上げれば、浜に近い道路を疾走する車の姿が目に入る。
 まさに先ほどの会話に出てきたスポーツカー然とした外観。
 この道がリゾート地に向かう事を考えれば、乗っているのも相応の人物なのだろう。

「あら、素敵な車ですこと」
「凄いよねぇ……あんなのに乗ってたら気分良いだろうなぁ」


9 :名無しさん :08/09/04 20:42:13 ID:aiHXnVEs
−5.

「ったく、学生どもめ。さぞかし良い気分なんだろうな」

 光岡自動車製ファッションスーパーカー「大蛇」のハンドルを切りながら、管代優介は毒づいた。
 浜辺で暢気に過ごしている女学生など、彼が今最も見たくない存在の五指に入る。
 今自分が――そして街の住人が置かれている状況について、懇切丁寧に説明してやりたい。

 まったく面倒な事になった。
 いきなり親父が行方不明になって、自分が跡継ぎとなった段からしてキナ臭かったのだ。
 有り余る金をつかって生涯働かずにのんびり過ごせると思っていたら――全く。
 どうしてこう厄介事に巻き込まれなければならないのか。 
 地位だとか権力だとかなんかいらないから、のんびり生きていけるだけの金さえあれば良いのに。

 そもそもこの大蛇にしたって別に金持ちの道楽で購入したわけではない。
 居住性の高さ、静かなエンジン音、そして運転のし易さなどを考慮し、
 単に一番「面倒くさくない」と思える車両を選んだだけに過ぎない。
 街の有力者の息子が安っぽい車を運転していれば、色々と面倒な勘繰りをされるかもしれないし、
 見栄えが良くて運転のしやすい車で、他の高級車と比べて安価な物と言えば、大蛇位のものだ。
 加えて言えば、蛇と言うのは風水の上では金銭を象徴する生き物なのだし、悪くは無い。
 悪くは無いんだが、糞。

「あーもう面倒臭ぇー……」

 ハンドルを握り締める自分の手を見ると、ひどく苦々しい思いに囚われる。
 右手の甲に浮かび上がった奇妙な印。
 痣のようでもあるのだが、独特の文様は刺青のようにも見える。
 これが意味する事を知っている優介にとってみれば、まさに具現化した疫病神だ。

 ああ、糞。今の状況だって『人に言える部分』だけを抜粋すれば羨ましがる奴が増えるんだろうなぁ。
 仕事の関係とはいえ、高級ホテルで外国人の女性と密会。しかも写真を見る限りかなりの美女ときてる。
 勿論、あくまで表向きは、だが。

「僕ァのんびり過ごしたいだけなんだけどなぁ……」

 ダメな親父を持つと苦労する。
 極度の面倒臭がりである自分を棚にあげて、優介は呟いた。
 変わって欲しいと思う奴がいるなら変わってやりたいよ。
 
 牧歌的な港湾区を抜けて、彼の大蛇は海上都市を横目にリゾート区へと入った。
 遠目に見ても巨大だった高層ホテルがぐんぐんと迫り、その大きさが嫌と言うほど良くわかる。
 件の女性はこのパレス・ミナサバの最上階を貸しきっているというが、まったく。

「良い眺めなんだろうなあ、糞」


10 :名無しさん :08/09/04 20:42:53 ID:aiHXnVEs

−4.

「本当、嫌になるほど良い眺め」
 
 ファーティマ・アブド・アル・ムイードは眼下に広がる街を見下ろし、そう一人ごちた。
 白衣を着た女性――と表現するには何処か幼さが残っている彼女。
 正確に言うならば「大人びた少女」と形容すべきか。
 大きな丸眼鏡が、更にその印象を強調する。理系の女学生といえば皆が信じるだろう。
 その一方、仕草の端々が妙に艶っぽい。
 漆黒の髪に褐色の肌、そして神秘的な碧眼と、オリエンタルな――神秘的とも呼ぶべき色気を彼女は纏っていた。
 少女のような容貌。大人びた表情。不可思議な色気。アンバランスな要素。
 古来から多くの西洋人がイメージしただろう『東洋の美女』そのものと言える。

「極東の辺境都市なんて退屈するに決まってると思ってたのに、綺麗な街なのね。
 これだったら家具から何から持ってくる必要も無かったかも。
 長期滞在するとなれば、慣れ親しんだ調度品があった方が落ち着くかと思ったのだけれど……。
 此方で色々作っても良いかもしれないわね。きっとその方が楽しそうだし。
 ねえ、父様、母様、兄様も、そう思わない?」
「ああ。そうだな、ファーティマ」
「ええ。私もそう思うわ、ファーティマ」
「そうだね。良い考えだよ、ファーティマ」

 いつもの習慣なのだろう。ポケットから革表紙の手帳を取り出して走り書きながら、彼女は背後を振り返る。
 其処に立っているのは穏やかな表情を浮かべた初老の男女と、三十台程の若者だった。
 ファーティマの言葉に頷く彼らは、彼女の言葉通りであるならば家族となるのだろう。
 だが――

「母様、約束の時間まであとどれくらいかしら?」
「あと十五分程よ、ファーティマ」
「それなら準備をするべきね。どんな服が良いかしら、父様?」
「此方が招いたんだ。正装で迎えるべきだろうな、ファーティマ」
「ならもう着替えた方が良さそうだわ。兄様、手伝って」
「ああ、良いともファーティマ」
「母様と父様は、その間にお持て成しの準備をお願いね」
「わかったわ、ファーティマ」
「わかったよ、ファーティマ」

 ――明らかに、奇異な点があった。
 彼女が優雅な仕草で腕を伸ばすと、すぐさま兄が傅いてシャツのボタンを外しにかかる。
 両親はファーティマの指示通り、客人の為のお茶と菓子とを用意するべく動き出している。
 そう、全てはファーティマの為に。ファーティマの指示に従って。
 末娘である筈の彼女が、まるで一家の主であるかのように振舞っているのだ。
 だが、誰もそれを疑問には思ってはいない。それが当たり前なのだというように。
 兄の手によって次々に衣服が取り払われ、瞬く間にファーティマは一糸纏わぬ姿となる。
 傷一つない滑らかな黒蜜色の肌を、自信を持って眺めていた彼女は、
 その視線がある一点に止まると共に、誇らしげな様子で微笑んだ。
 左手に浮かんだ幾何学的な文様。ぼんやりと輝くそれを愛しげにみやる。

「本当、神に感謝しなくてはならないわね」


11 :名無しさん :08/09/04 20:44:43 ID:aiHXnVEs
 
−3.

「これも御仏の導きよ。ありがたやありがたや」

 一面を緑に囲まれた山中深く。
 その僧侶は猪の額に手刀を打ち込むなり、高らかに言い放った。

 袈裟を内側から押し上げる筋肉、顔中に生えた髭。
 身に纏った装束を抜きにすれば、とても坊主とは思えぬ姿。
 実に獣染みた容貌の男である。
 否、その印象は姿形だけに留まらない。
 この刹那。男の一撃を受けた猪は、どうと音を立てて地面に倒れこんでいた。
 見ればその額が完全に割れ、砕けた骨と血と脳漿とか毀れている。
 悲鳴を上げる暇もなく命を奪われた事は明らかである。
 正しく人間離れした膂力であった。
 筋力に留まらず、突進してきた獣の額に正確無比な攻撃を打ち込める辺り、
 およそ武術とは縁遠い人物にも、事の異様さがわかる事だろう。
 両手の血を拭うことなく腰から短刀を引き抜き、嬉々として獣を解体しているこの僧侶。
 彼は、それを児戯であるかのように軽々とやってのけたのだ。

「しかし――拙僧も夢想だにせなんだ。このような土地に、このような試練があったとは」

 手早く火をおこし、引き剥がした獣肉を炙りながら、坊主はしみじみと呟いた。
 全く躊躇することなく命を奪い、肉を食らわんとするこの男、名前を無道と言う。
 多くの僧侶が認めたがらないだろうが、これでも立派に俗世を捨てた身である。
 無道は自らの心身を鍛えあげ、修行をする為に全国行脚をしている修行僧だ。
 この水佐波を訪れたのも、風の向くまま気の向くまま、好き勝手に旅をした結果に過ぎない。
 しかし、無道に言わせればそれこそが御仏の導きであったのだ。
 右手甲に浮かびあがった不可解な文様こそが、その証左。
 いわばこれは挑戦状のようなものだと、無道は知っていた。

 ありとあらゆるモノの挑戦を、無道は受けた。
 立ち塞がる障害、ありとあらゆる試練は、この身一つで乗り越える事ができる。
 ――否、乗り越えてしまった。
 如何なる人間であろうとも、試練を超えれば先へと進める。
 だが、無道には如何なる障害であろうと、試練にはなり得なかったのだ。
 高みに昇りたくても、そこへ至る手段が無い。
 無道は常にその事実に打ちのめされ、半ば以上絶望していた。
 どんなに肉体を鍛えても、どんなに精神を鍛えても、己は高みに昇れない。
 この世界で、自分はただ生きていくだけのことしか許されないのか。
 無道は悩み、苦しみ、そして絶望した。


12 :名無しさん :08/09/04 20:45:12 ID:aiHXnVEs

 だが――これはどうだ?

 恐らく、どんな人間にも想像できない戦いが繰り広げられるだろう。
 この障害を越えて勝利する為には、どれだけ鍛えても足りないだろう。

 世界にこれ以上の試練があるわけがない。

「拙僧の過去は、今この時の為にあったのだ」

 今、無道は確信を持ってそう言えた。
 この聖杯戦争に参加する為に、今の今まで心身を鍛え上げてきた。
 そう思えば、ただ無為に過ごしてきたと思った三十余年の人生が、急に価値を帯びる。
 昂ぶる想いは身を震わせ、世界に絶望していた心に喜びが蘇る。
 否、まだ足りない。まだ自分は満足していない。
 用意されただけの試練を受けるのは、無道の流儀ではない。
 試練は自ら選び、自ら背負うものだ。
 であるならば、彼の選択はただ一つだった。
 自らにより重荷を背負わせるべく、万全を期して夜を待つ。
 その為には肉が足りない。酒が足りない。
 今はただ只管に食らい、啜り、心身の状態を整えるのだ。
 そう言い聞かせて尚、逸る気持ちを押さえ込む事など出来そうにも無い。
 無道はその顔に鮫のような笑みを浮かべた。

「――――血が騒ぐわい」


13 :名無しさん :08/09/04 20:46:10 ID:aiHXnVEs
−2.

 ――――血が騒いでいた。

 地べたを這い回り、泥を飲み、木の根を齧って飢えを抑えて数日が過ぎた。
 どうしても我慢できない時は小動物の血を啜った。それでも飢えは治まらない。
 当然の話だ。
 これは胃や臓腑を始めとする肉体とは無縁の飢えなのだから。
 彼という存在自体が餓えており、その為に身体を突き動かそうとする。
 だが、それはできない。
 周囲には大量に食事が存在するというのに、我慢し続けるのは拷問以外の何者でもない。
 だというのに、それだけは出来ないのだ。
 人でありたいのならば、人間を襲う事だけはしてはならない。

 そう、彼は人ではなく、人であろうとするだけの存在だ。
 否、彼が認めていないだけで、その肉体も精神も既に人外へと変わっている。
 
 彼はカール・ノイマンという名前の人間――だった。

 かつて人であり、人でなくなった男。それが彼だ。
 今の彼は、生きる為に人間の血液を欲する化け物――吸血鬼である。
 だというのに彼は、血を啜ることを是としない。
 自分は人間なのだ。断じて化け物ではないと。
 故に我慢する。
 人間を襲う事を必死になって我慢する。
 だが、我慢するだけで飢えから逃れられるわけもない。
 我慢が極限に至る度、彼は人間を襲った。
 彼自身の判断で『吸血しても良い』人間を選んで。
 殺さない程度に気をつけて、血を啜った。 


14 :名無しさん :08/09/04 20:47:09 ID:aiHXnVEs
 だが、その時点で既に破綻していた事に、彼は気付いていなかった。
 考えても見てほしい。
 人間であるならば、生きる為に人間を襲う必要は無いのだ。
 人が人を殺す理由とは、生存の為ではなく欲望の為。
 少なくとも自分が人を襲う事を是としなければ、カールは人間足り得ない。
 だが、彼はそれを否と言った。
 最早自分が人間ではないと認めなければならないのに。

 不毛な話である。
 救いようのない存在である。

 それがカール・ノイマンという名前の吸血鬼だ。

 だが、彼にとって希望が無いわけではなかった。
 希望は右手に浮かんだ刻印の形をしていた。
 彼はこれが自分を救ってくれると信じていた。

 だからこそカールは水佐波にいる。
 こうして林の奥で小動物の血を貪り、自分は人間であると言い聞かせながら。

 ――救いようの無い話である。

 誰に助けを求めるわけでもなく。
 誰かに縋ることもせず。
 今、この異郷の地において。

 カール・ノイマンは只管に孤独だった。


15 :名無しさん :08/09/04 20:48:14 ID:aiHXnVEs
−1.
 
「というわけで、わたくしは孤独なのですわ!」
「つまりそれは恋、というわけか」
「脈絡が無いよ、みこと、冴子」
「………………」
「やーちゃん、クッキーにフォーク刺してどうかしたのー?」

 女三人集まればかしましいとの事だったが、五人ともなれば別格だ。
 喫茶店レーヴェンスボルンは、華やかかつ騒々しい雰囲気に包まれていた。
 
 海上都市にある比較的安価かつお洒落な喫茶店と言えば、それはもうこの店以外には有り得ない。
 女子高生を始めとして、OLから旅行客まで幅広く愛されている優良店だ。
 中でも常連客として知られているのが、水佐波女子高校の水泳部女生徒陣だった。

 水泳部のエースである夏海、みことを始めに、部長の姫宮冴子、新人の黒崎八重、
 そしてレーヴェンスボルンの看板娘(アルバイト)でもある小日向葵。
 これに冴子の幼馴染だからか常に一緒にいる二条忍を入れて以上六人。
 彼女達は定位置である窓際の日当たりの良いテーブルに陣取って、毎日のようにお茶会をやっていた。
 今日は一人足りないとはいえ、これだけ揃えば賑やかにも華やかにもなるというものだ。

「ええ、聞いてくれますか皆さん!
 あろう事か……あろう事か、彼が――……」
「彼がどうしたんだ、志那都。浮気でもしたのか?」
「とんでもありません!
 彼が家族旅行に行くから、しばらく逢えなくなってしまうのです!」

 ばん、とテーブルを叩いて力説するみこと。
 呆気に取られたり納得したり大変だねえと言ったりする面々の中で、
 真っ先に反応したのが、先ほどまでみことを睨んでいた黒崎八重だった。

「……志那都さん、それはちょっと贅沢すぎる悩みではなくて?」
「んー。でもやーちゃん、わたしは少しわかる気がするよー。
 さえちゃんも、しーちゃんも、そうじゃないかなー?」 
「まあ、わからなくもないな。
 愛しい人と逢えず、火照った身体を毎夜のように慰めると体力が持たん」
「冴子、ちょっとそれは下品」
「む、そうは言うがな、二条。近頃は少女マンガだってその位は――」
「真夏の夜を涼しくする稲川先生の怪談百物語」
「――自重しよう、うむ」

16 :名無しさん :08/09/04 20:48:54 ID:aiHXnVEs

 まあ、大体がこんな感じだ。
 脈絡も無いことを誰か(大概はみこと)が言い、それに夏海か八重が突っ込みを入れ、
 葵が場を和ませつつ話を引き継いだところで、部長が茶々を入れ、忍が突っ込む。
 メンバー内に多少の軋轢があるとはいえ、彼女達は比較的仲良しだといえた。
 少なくとも悪くは無い。その事は確信を持って言える。 

「とはいえ、志那都。今後も彼とは離れる機会があるだろう?
 その度にそうして暴れていては、それこそ身が持たんぞ」

 今回だって右手に痣が出てるじゃないか、という冴子の指摘も何のその。
 みことは更に大きく両手を振って――今度は喜びに満ち溢れた表情を浮かべる。

「だから今夜は彼とデートでーすーわぁーっ!」
「成程、みことは結局こう持っていきたかったわけか」
「つまり志那都の惚気か。今夜は暖めて貰うのか?」
「はしたないですわね、部長。婚前交渉なんて致しませんわ!」
「…………………………………………」
「やーちゃん、やーちゃん、クッキーが粉になってるよー?」
「八重には葵の『ほにゃあ』も通用しないな」

 ぎりぎりと歯軋りをしながら恋敵を睨みつける八重を見て、忍は小さく溜息を吐いた。
 この辺り、みことが八重の敵意に気付けばどうにかなるのだろうけれど、
 天真爛漫というか唯我独尊というか評価のわかれる彼女は、一向にそれに気付かない。
 それが良い事なのか悪いことなのかは、わからないが。

「……まあ、黒崎にとっては不快な話だろうなあ」
「恋と戦争はどんな手段も許されるとは言うけどね……」



17 :Fake/first war:08/09/04 20:49:34 ID:aiHXnVEs
0.

 それは戦争だった。

 求めるのはたった一つの願望器。
 集まるのは七人の魔術師。
 競う手段は七騎の英霊。

 人知を超えた戦い。常識以上の闘争。
 魔道と神秘とが夜を翔け、神話の時代が再現される。

 即ちそれは世界で最も小さい戦争。

 名前を聖杯戦争という。


 そして今。
 海底深く、偽りの聖杯がごぼりと静かに蠢いた。


『Fake/first war』


 第一次水佐波聖杯戦争、開幕。

18 :Fake/first war:08/09/04 20:51:16 ID:aiHXnVEs
以上、ここまで。
あ、念のために言っておくと、
皆鯖SSスレの「鉄人の場合」と同作者ですんで。

というか触発されて本編のプロット練りだして
まだ完成させる自信が無かったから冒頭部分だけ書いてみた、と。
まあこんな感じです、はい。

19 :Fake/first war:08/09/05 19:36:54 ID:CJ16Wl2U
1.

「んー……やっぱりもう、夏も終わりかなぁ……」

 ぺったぺった。
 ゴム製のサンダル特有の足音を響かせながら、夏海はそう一人ごちた。
 港湾区から住宅地の自宅までのんびりと歩いて30分ほど。
 そこで着替えてから山の方に向かって歩き出して15分。
 昼過ぎまで遊んで、其処から小一時間も経てば――もう夕方だ。
 あれほど煩かったアブラゼミの鳴き声が急に消え、変わってヒグラシの鳴き声が聞えてくる。
 それにしても、どうしてヒグラシの声はあんなに寂しそうなんだろう?

「夏にお別れを言っているんだって、お婆ちゃんは言ってたっけ」

 何年も何年も土の中で過ごして、たった一度の夏を過ごして、死ぬ。
 生きて、生かしてくれてありがとう、さようならと、夏に告げて。
 だからヒグラシが鳴くのは、夏の終わりなんだよ、と。
 人間の尺度で捉えれば、夏しか生きられない彼らの命は儚いものだけれど、
 でもセミ達にとっては――果たしてどれほどの時間なのか。
 彼らはどんな気持ちなんだろう?
 精一杯生きたのだろうか。後悔は無いのだろうか。
 そんな物思いにふけりながら彼女が歩いていると――

「……あれ?」

 道の端をひとり、とぼとぼと歩く人影に気がついた。
 ――女の子だ。
 真っ赤なランドセルに、黄色い帽子。
 小学1年生くらいだろうか。一人で、寂しそうに歩いている。
 
「……………」

 ちょっと小走りになって、女の子の横に並ぶ。
 だけど、彼女は夏海の方に目もくれない。
 当然だ。見えていない。この子はもう何も見てはいないのだ。

「ね。もう、その……こんな事しなくって良いんだよ?」
 
 声をかけるが、当然反応は無い。
 困ったなと頬を引っかきながら、女の子の歩調に合わせてとぼとぼと道を行く。
 山の方に向かうにつれて、道も緩やかな坂道へと変わりはじめる。
 海上都市の建設が始まって以降、ただの港町だった水佐波も随分と発展した。
 第一大橋、第二大橋という海上都市まで続く橋の間の浜辺はすっかりリゾート地だし、
 それに伴って街の中心部も大分近代化が進んできている。
 とはいえ、ちょっと離れればすぐに昔ながらの風景に戻ってくるのだけど。
 この山の辺りは、まさにそれだ。
 まだ住宅街と言う風情だけれど、もう少し行って民家が疎らになれば――。


20 :Fake/first war:08/09/05 19:37:40 ID:CJ16Wl2U
「――――――あ」

 不意に視界に飛び込んだ景色に、思わず彼女は声を上げた。
 ぐしゃぐしゃに歪んだガードレールと、その傍に備えられた花束。
 驚いて横を振り向けば、既に女の子の姿は無かった。
 何があったのかは一目瞭然で。だからこそ夏海の胸は苦しくなる。
 この女の子は、これを延々と繰り返しているのだ。
 自分がどうなったのかを気付くことも無くて。
 きっとあの子は、学校に戻ったに違いない。
 学校から、自分の家に向かう帰り道。
 そして、ここで――……。

「………。やんなっちゃうなぁ……」

 幽霊に出逢ってしまった事ではなくて。
 何度も通っていた道なのに、今日まで女の子の存在に気付かなかった事に。
 『視る』事ができるのだから、ひょっとしたら何か出来たのかもしれないのに。
 そんな感傷的な想いに、彼女は其処に立ち止まった。

 ――高波夏海は幽霊を『視る』ことができる。

 幼い頃から、どうしたわけか『視える』。
 霊感があるとか、特殊な力があるわけでもなく、ただ『視える』。
 だが、それだけだ。
 別に幽霊と話せるわけでも、触れるわけでもない。
 とはいえ彼女の祖母や、兄に言わせれば「話せるわけがない」のだそうだが。
 幽霊というのは単なる記録に過ぎないのだという。
 強い想いの残滓が、まだ世界の中に残っているだけ。
 いずれ消えてしまう存在。
 死ぬ直前までの行動を延々とリピートする記録映像。
 其処には意思もないし自我もない。

「わかっては、いるんだけどねぇ……」

 はぁと溜息を吐き、夏海は再びペタペタと歩みを再開した。
 しばらく行くと右に左に傾きながら、だらだらと何処までも続く坂道に出る。
 半ば以上まで坂を登れば、其処からは時の止まったような土塀と竹薮が左右に続く。
 水佐波の海上都市における発展や、陸上都市の衰退からも忘れ去られた場所。
 夏海は幼い頃から何度もこの辺りに脚を運んでいるけれど、やっぱり少し不思議だった。
 ここだけ世界が違うような、そんな雰囲気が漂っている。
 だが、彼女は躊躇しない。ぺたぺたと間の抜けた足音が続く。
 坂を登りきった先に、彼女の目指す場所があるのだから。

 それはまた、随分と時代がかった庵だった。

 其処にあると注視していなければ見落としてしまいそうな、小さな庵。
 一応は『蔵馬屋』などと看板が出てはいるものの、本当に店としてやっているんだろうか?


21 :Fake/first war:08/09/05 19:38:40 ID:CJ16Wl2U
「いっつも思うんだけど、よく兄さんは生活できてるよね」

 こんな所でやってる古書店で、食べていけるほど儲かっているのかどうか。
 まあ生活してるんだから儲かってるんだろう。其処を深く考えたりはしない。
 遠慮なく引き戸に手をかけて、がらりと横に押しのける。

「おーい、兄さん、きたよー」

 ――――返事がない。
 山積みにされた古書や古文書に占拠された店内には人の気配がなかった。
 入り口に置いてある勘定台に店主の姿はない。しかしこれ、地震でもあったら埋まってしまうんじゃないか。

「兄さーん? ……来いって言っておいて留守なのー?」

 勝手知ったる人の家、というよりも半ば以上我が家だと思っている店内へと入る。
 ぽいぽいとサンダルを脱ぎ捨てて畳に上がり、古書を崩さないよう気をつけて奥に進めば――

「おう、来たか」

 ――奥まった座敷で、煙管を噴かしてる男がいた。
 蔵馬鉄人。
 いつも甚平やらを着込んで煙管を片手に持っているこの人物こそ、この店の主だ。
 仕草も何処か年寄り臭く、ぼさぼさの黒髪は無精の証のようなものだが、
 不思議とそういったものが良く似合う男だった。
 とはいえ夏海にとっては単なる親戚に過ぎないのだが。
 最も家系図なんか見たことがないので、どういう関係なのかもわからない。
 だから「親戚の兄さん」と呼ぶようになって――それが定着した。

 煙草盆に煙管を叩き付けて灰を落とした鉄人は、その顔に渋い表情を浮かべる。
 と言っても、いつも不機嫌そうな顔をしているから、見た目に大差は無いのだけれど。
 ただ、夏海にはこの男の表情は良く判った。伊達に長い付き合いではない。

(あっちゃー……怒ってるよ、兄さん)

 予想通り、鉄人はじろりと夏海を睨みつけて言い放つ。

「まァた幽霊に関わってたろ」
「あ、あはは……うん」

 頬を引っかきながら笑って頷く夏海を見て、鉄人は深く溜息を吐いた。
 鉄人は何故か置いてある壷に手を伸ばすと、其処から塩を一掴み取り、夏海に振り掛ける。
 無論『視える』夏海が気にしていないのだから"憑いてきている"事は無いのだろうが。
 まあ、気休めのようなものだ。或いは昔気質な彼の癖か。

「ったく、優しいのも考えもんだなァ……。あんなのに関わっても時間の無駄だろうに」
「う、そりゃ返事がない事くらいわかってるけどさー……」
「返事があったら困るだろうが。
 反応するって事ァ、幽霊じゃなくて悪霊とかの類だからな。
 それこそ憑いて来て殺されっちまうぞ」
「でも、さぁ……。見えるんだから、何とかしたいじゃない」
「何ともできねェんだっつってるんだろ。あんま婆ちゃんに心配かけるな。
 ―――――ま、良いから座れ。別に小言聞かせたいわけじゃねぇんだ」
「うん」
「あと茶でも飲んでけ。茶請けにドラ焼きもある」
「おー、良いね。うん、貰うー」

22 :Fake/first war:08/09/05 19:39:06 ID:CJ16Wl2U
 言われるがまま、夏海は卓袱台を挟んで鉄人の対面に腰を下ろす。
 一方の鉄人は慣れた様子で急須から湯飲みとマグカップに茶を注ぎ、
 ドラ焼きを乗せた皿と共に、クッションに座っている夏海の前へと差し出した。
 他の座布団が渋い緑色なのに対し、この青色のクッションは彼女が持ち込んだ物だ。
 いわば夏海専用の特等席。マグカップも同様で、持ってきたのは――確か中学生の頃だったっけか。
 両手に持って鉄人が淹れてくれたお茶を啜りながら、上目遣いで彼女は兄の様子を伺った。

「で、だ。 電話でも言ったが――ま、たいした用事じゃないんだ」
「わざわざ呼び出したのに?」
「呼ばなくたって来るだろうが、お前は」
「まぁねー。兄さんのお茶、美味しいし」

 ついでに言えば彼の用意してくれるお茶請けも美味しい。
 ドラ焼きやら羊羹やら饅頭やら大福やら、あまり若者向けのお菓子ではないけれど、
 祖母と一緒にお茶を飲むことが多かった夏海にしてみれば、こっちの方が馴染み深い。
 みことや葵なんかは大変らしいが、特に体重計が天敵というわけでもないし。
 餡子と皮の感触を楽しみながら、ドラ焼きを頬張った。

「まあ、小言に聞えるかもしれんが、そうじゃない。割と真剣な話だ」
「うん」
「明日から二週間――かねぇ。ま、そんぐらいの間は、あんま夜遅くまで出歩くな」
「へ? 兄さんがそーいう事に口出しするの珍しいね」
「だから小言じゃねえって。 ちぃっとばかし、物騒になるんだ。
 友達にも遅くまで出歩くなって言った方が良い。できれば海にも行かない方が良いんだが」
「海は無理。 ――――でもさ、なんでまた突然?」
「あー……。盆じゃねえけど、幽霊とかが強くなる時期みたいなもんだ。感じなかったか?」
「………………あ」

 そういえばと思い出したのは、来る途中に出逢った女の子。
 今まで一度も見なかったのに今日になって突然『視えた』。
 それはそういう事なのかと、小さく頷いて。

「ん、わかったよ。気をつける」
「本当か?」
「本当だってば。お婆ちゃんに心配かけるような事はしないもん、あたし」
「…………本当だな?」
「…………ラジオ体操なんか行っちゃったりとかしたら―ー」
「やめとけ。今更、絵の具セット欲しがる歳でも無いだろ」
「……はぁーい。あ、それなら本とか持って行って良い? 退屈だしさ」
「あー……。わぁった、好きに持ってけ」
「やたっ! 兄さん、太っ腹ーっ」


23 :Fake/first war:08/09/05 19:39:39 ID:CJ16Wl2U
 ちゃんと返せよという兄の声を背に受けて、パタパタと店舗部分へと戻る。
 品揃えが多い、というか雑多に過ぎるこの店には、本当に大量の本が置かれている。
 その上、商売をやっているから当然なのだが、気付くと品揃えがガラッと変わっているから驚きだ。
 幼い頃から本を読ませてもらっていた夏海でも、読んだ事のない本の方が多いのではなかろうか。
 最も、象形文字紛いの域にまで至った書体なんかは完全にお手上げだが。
 埃っぽい紙の山の間を行ったり来たり。本を傷めないよう気をつけつつバサバサとひっくり返す。
 後を付いて来た鉄人が呆れ顔なのにもお構いなしだ。

「おお、洋書もあるんだ。Rhinogradentia? 何語?」
「フランスの学術本だ。和訳の『鼻行類』がそっちの山にある」
「んじゃあこれ。『完全和訳ロガエスの書』ってのはー?」
「あー、それはやめとけ。つかエノク語なんざ翻訳できるか」
「だったらこの『後家の庭』とか。日本のでしょ、これ」
「……そいつは艶本の類だな」
「おおっと」

 そうして古書の山を引っ掻き回すこと暫し。
 ふと夏海が、一本の巻物を探り当てた。随分と古い。

「ねえ兄さん、これ解いて見て良い?」
「今更聞くな。構わんよ」

 許可を求めてから紐を解くと、まず最初に飛び込んできたのは漢字だった。
 とはいえ漢字だという事がわかるだけで、何が書いてあるのかはさっぱりわからない。
 そのままコロコロと転がしていくと――思わず彼女は目を見開いた。

 其処に描かれていたのは、美しい女性の絵姿。
 長く艶やかな黒髪。豹の姿が織り込まれた、ゆったりとした着物。
 穏やかな表情――どこか飄々とした、風のような微笑。
 繊細な筆運びによる水墨画。玄人の作ではないだろう。
 だが――丁寧で、心が篭っていた。
 そのことだけは、芸術に疎い夏海にも、よくわかる。

「こりゃ漢書だな。唐宋か……その後くらいかね」
「兄さん、この巻物が何かわかるの?」
「いや、この間纏めて仕入れた奴だからなぁ……」
「ダメじゃない。店主なんでしょー、それでも」
「わぁったよ、後で調べておく――で、どうするんだ?」
「んー……」

 既に何冊か選んでスポーツバッグに仕舞っている。
 いるが――何故かこの巻物の絵は気に入っていた。
 少し悩んだ後、それも一緒に持って帰る事にする。

「うん、これで良いよ」
「後でちゃんと返せよ。あと汚すなよ。つか、そろそろ帰れ」
「わかってるって。兄さんの大事な商品だもん。って、もうこんな時間か」

24 :Fake/first war:08/09/05 19:40:11 ID:CJ16Wl2U
 慌ててカバンを抱え、放り出したままのサンダルをつっかけて。

「それじゃあ――また今度遊びにくるねー」

 そう言って手を振り、夏海はペタペタと足音を立てて戸口の外へと駆け出した。
 続いて下駄を履いた鉄人が見送りに出ると、もう彼女の姿は夜闇の中に消えている。
 夏も終わりに近づき、大分夜が早くなってきたのだろう。
 ヒグラシの鳴き声を聞きながら、鉄人は小さく顔を顰め、煙管を口元に運んだ。
「まったく……嫌な予感しかしないってェのは、どういう事だ。糞」


 ぺたぺたと、間の抜けた足音と共に夜道を行く。
 特に変わったことの無い、いつも通りの日だった。
 兄さんに呼び出されて注意されたっていうのは驚いたけれど、
 あの古書店に遊びに行くのは他の日だって変わらない。

 泳いで、友達と遊んで、騒いで。
 兄さんのお店でお茶を飲んで、話して。
 あとは家に帰って、お婆ちゃんとご飯食べて。
 そういえば宿題を少し進めておかないと。
 受験勉強も始めないといけないなー。
 でもあたし、大学行くのかな。どうしよう。
 そうだ。明日、兄さんに進路について相談してみようかな。

「……………あれ?」

 既視感を覚えて、夏海は脚を止める。
 夕暮れ時に女の子と出逢った辺りに、また別の人影が立っていた。
 今度は――ひとことで言うなら、チンピラだ。
 だらしない服装をしていて、片手にジャラジャラとストラップの下がった携帯。
 大声で何か喋っているみたいだけれど、それは聞えない。
 彼女にできるのは『視る』事だけ。
 そう、その男は『視えた』のだ。
(――もう、死んでるんだ。この人も……)
 兄が言っていた事を思い出す。
 『幽霊が強くなる時期』だとか。
(そりゃあ、まあ。あたしだって自分で何とかできるとは思ってないけどさ)
 きょろきょろと周囲を見回す。誰も見ていない。
 まあ、あの兄さんは出不精だからつけられている事は無いだろうけど。
「明日から、って約束だもんね」
 うんと頷いて、先刻と同じように小走りで男の横に並ぶ。

「あのー……。その、貴方は、もう、死んでるんですよ……?」

 と声をかけた瞬間、男の顔が此方を向いた。


25 :Fake/first war:08/09/05 19:40:40 ID:CJ16Wl2U
「…………ッ!?」

 一瞬、自分の声に反応したのかと思ったが――違う。
 彼が見ているのは、彼女の背後。
 坂道と平行して続いている、竹薮の奥だった。
 続けて、男の霊が走り出した。反対側の竹薮に向かって。
 ――――つまり、何かが現れたのだ。この男の目の前に。

「ちょ、ちょっと……待って!」

 慌てて夏海が後に続いて、竹薮に飛び込んだ。
 必死に走る男の背中を彼女もまた賢明になって追い駆ける。
 ――そう、必死なのだ。
 追いつかれれば死ぬ。
 それがわかっているかのように、男は走っていた。
 すぐに引き離され、男の姿が見えなくなっても、夏海は走る。
 尋常でない事はすぐにわかる。後を追うのも容易かった。
 竹がなぎ倒され、真新しく一本の道が出来ていたのだから。
 
 思えば、高波夏海は引き返すべきだったのかもしれない。
 少なくとも、今ならばまだ戻ることが出来たのだから。
 だが、夏海は引き返さなかった。
 得体の知れない何かが、彼女を突き動かしていた。
 持ち前の優しさか、それとも好奇心なのか。
 或いは、陳腐な表現をするならば、やはりこう呼ぶしかあるまい。

 ―――――運命。

 びしゃりと踏みしめた赤色の何かが、夏海にとっての運命の扉だった。

「―――え?」

 竹薮の奥には、赤色が広がっていた。

 真ん中には、かつてヒトガタだったなにか。
 その傍には、ヒトガタをしている何か。
 荒く息を吐きながら、赤色の中に口を突っ込み、貪っている。
 食べてるんだ。
 そう理解した瞬間、彼女は胃からこみ上げるものを感じ、口元を手で押さえた。
 ――食べてる。
 食べられてる。
 これは。
 これは、一体。
 何なんだ。


26 :Fake/first war:08/09/05 19:41:13 ID:CJ16Wl2U
「なんだ、おまえ――……その、右手――……」
「……あ、え……みぎ、て……?」

 獣とばかり思っていた影が、掠れた声を吐き出した。
 人の言葉。呆気にとられた彼女だったが、つられて右手甲を見やる。
 ――痣だ。海辺で気付いたあの痣。
 それが、昼間にも増して赤くなっている。

「令呪……な、のか……? だったら――マス、ター……」
「え、ちょ、ちょっと……れいじゅ、って……これ、ただの痣―ー」
「なら―――」

 掠れた声が、どこか昂ぶったように感じた。
 後悔してももう遅い。
 ダメだ。聞いちゃいけない。
 逃げなくては。逃げなくては。
 逃げなきゃ―ー

「殺して、良いんだな?」

 殺される。
 殺される。
 殺されて、殺されて、殺されてそして――

「ランサァーッ!!」
「………ッ!」

 喰われる。
 フラッシュバックする赤色が、彼女の足を突き動かした。
 次の瞬間、夏海は逃げ出した。
 草や枝でむき出しの腕や脚が傷つけられるのも構わずに。
 文字通り脱兎の如く、だ。
 本能的に理解していたから。

「はぁっ!は…ッ!んっ…はぁ…っ! あぅう……ッ」

 背後からは何者かの足音が迫る。
 速い。今にも追いつかれそう。でも――……。

(嬲られてる……!?)

 追い詰められた動物染みた直感が、そう告げていた。
 食べられてしまった男の人よりも自分は明らかに遅い。
 あの人が必死で走って、それでも追いつかれて殺されたのに。
 なのに自分はまだ生きていて――……
 "アレ"は、こうやって自分の後をついてくる……ッ!

27 :Fake/first war:08/09/05 19:41:51 ID:CJ16Wl2U
「はぁ……! はぁっ……はぁッ……うぐぅっ!?」

 竹薮を抜けて先ほどまでいた道路に出た瞬間、背中に強い衝撃が打ち込まれる。
 焼けるような痛みと共に、衝撃で思わず脚が縺れ、転んだ。
 打たれたのだと理解した時には、既に追跡者が間近にまで迫っていた。

 長く伸ばした黒髪。闇の中でも見える髭。
 素人目にも実戦的だとわかる甲冑。豪奢なマント。
 まさしく王者。
 
 だが。

 この男が王であるならば。
 ――間違いなくそれは暴君であるに違いない。

 爛々と輝く瞳は人のそれではない。
 亀裂のように裂けた口の中の赤色は、冒涜的なまでに色鮮やかだ。
 この距離であっても漂う呼気は、喩え様もなく生臭い。

 地に伏したまま呆然と男を見上げる夏海に対し、
 この男は情け容赦など欠片も有していない目を向ける。

「げほっ………うあぁあああッ!」

 次の瞬間、夏海の鳩尾へと、無慈悲にも爪先が突き込まれ、
 そのまま彼女の身体はボールのように軽々と宙を舞う。

「か…は……」

 反対側の竹薮の中へと放り込まれ、背中が地面に叩き付けられた。
 なんでこんな所に開けた場所があるのか疑問に思う暇も無い。
 あまりの衝撃に、肺の中の空気が全て押し出される。
 ぶつけるか切るかしたのだろう。全身が酷く痛む。
 もう一歩も動けない。指一本も動かせない。
 痛い。
 怖い。
 痛い。
 怖い。
 怖い……!

(――あ、もうダメだ)

 逃げようなんて気は、とうに失せた。
 彼方から近づいてくる、具足のがちゃがちゃという金属音。
 それを聞くだけで、身体中が震え、息がつまる。

28 :Fake/first war:08/09/05 19:42:12 ID:CJ16Wl2U
「悪く思うでない。――これもまた因果というものだ」
「お…願……やめ……て…」
 
 そう言って男が剣を抜いた。
 月光に切っ先が煌く。
 呼吸ができない。声が出せない。
 これは、昔似たような事が。
 溺れたときと一緒だ。
 息が詰まる。苦しい。
 視界が暗くなる。怖い。
 このまま堕ちてしまいそうで。
 消える。周囲からじわじわと押しつぶされるように。
 海という世界に潰されて、消されてしまう。
 口を開く。酸素を求めて舌が伸びる。だが、声すら出ない。
 怖い。死にたくはない。思考が途切れそうになる。
 我慢していたのに、目尻からは涙が零れ落ちた。
 怖い。怖い。怖い。怖い怖い怖い。怖い……!

(こんなに怖いんだもん。そりゃ、幽霊になるわけだ)

 死への恐怖が齎す窒息に苦しみ、喘ぎながら、ぼんやりと夏海は思った。
 思考の全てが怖くて怖くてたまらないと叫んでいるのに、頭の奥のほうには冷静な部分が残っている。
 その部分が、吹き飛ばされた際に地面に散らばったバッグの中身に目を留めた。
 土に塗れて酷い有様になってるだろう。ひょっとすれば破けているかもしれない。
 紐が解けて転がった巻物が、すぐ間近にまで届いていた。

(兄さん、怒るだろうなぁ。ごめんねぇ……)

 縋るように手を伸ばす。辛うじて、指先が触れた。
 右の手がいやに熱い。
 振り上げられる剣。
 観念して目を閉じた。

 そして――――


29 :Fake/first war:08/09/05 19:42:33 ID:CJ16Wl2U
 そして――――
 
 ――救い手は本当に、奇跡のように現れた。

 ごうと吹き抜ける風の音。
 水面まで一気に昇った時のような爽快感。
 肺に空気が入ってくる。

「もう眼を開けても大丈夫」

 鈴の音のような声。
 恐る恐る瞳を開けば――月が間近に見えた。
 自分が空中にいるのだと認識した刹那、え、と意識が混乱する。
 慌てて身動きしようとした手足を、しなやかな指先がそっと抑えてくれた。

「え、えと…………」

 見れば、彼女を抱えているのは女性だった。
 長く艶やかな黒髪。豹の姿が織り込まれた、ゆったりとした着物。
 穏やかな表情――どこか飄々とした、風のような微笑。

「安心してくださいまし。わらわはそなたの敵ではありんせん」
 
 そして、あの血溜りこそが夏海にとっての運命の扉であるならば。


「問おう。そなたがわらわのマスターか?」


 この言葉こそが――その扉を叩く、運命の音だった。

30 :Fake/first war:08/09/05 19:43:08 ID:CJ16Wl2U
以上、ここまで。

主人公を最初に襲うのはランサーの役割だと思うんだ。

31 :名無しさん :08/09/05 19:47:07 ID:C8dL67tS
乙。しかし筆早いですね
ただ一個だけツッコミが。

>霊感があるとか、特殊な力があるわけでもなく、ただ『視える』。
>だが、それだけだ。
>別に幽霊と話せるわけでも、触れるわけでもない。

設定的には夏海は霊体を触れますよ。
そこはちょっと設定変えたと言うのならいらんお世話ですが一応。

32 :名無しさん :08/09/06 00:23:32 ID:R0L1z9AN
別にそう注目すべき間違いじゃないんだし、いいんじゃないかな

33 :名無しさん :08/09/06 00:24:48 ID:R0L1z9AN
ってことでGJ

34 :名無しさん :08/09/06 00:50:09 ID:3EBFdgaP
GJ
普通子の鯖はだれだろ?

35 :名無しさん :08/09/06 01:23:40 ID:TwMfnFly
見れるだけじゃなくて触れるのかとか、単に見えるだけじゃなくて霊感が強いのかによって
霊体化したサーヴァントを見る事が出来るかが変わってきたりもするし重要な気もするけどなぁ。

とはいえそのほかの部分はGJの一言に尽きる。続き頑張って!

36 :名無しさん :08/09/06 07:30:11 ID:0+Ipgu5y
うおぉぉぉぉぉ!!

SSスレのOPの一つを書いた者だが、
全部にちゃんと繋がるように纏めてあるんだな。上手い!
いやぁやっぱりこういう瞬間があるから皆鯖や皆聖は止めらんねぇわ。

さて、普通子の鯖は日本女性?となるとあの人かあの人か……。
これからの展開が楽しみだZE!

37 :名無しさん :08/09/06 14:54:22 ID:cpbM/U7y
遅れたけどGJ!

38 :Fake/first war:08/09/06 17:56:48 ID:CnvVPM/4
2.


「問おう。そなたがわらわのマスターか?」

 ――その一言が、高波夏海を神秘の世界へと導く運命の音だった。

 偶然巻き込まれ、ただ捕食される哀れな被害者ではなく。
 同様の手段を持って身を守る、その世界の住人として。

 自覚は無くともこの瞬間――夏海は聖杯戦争へと引きずりこまれたのだ。

「ます……たぁ……?」

 怪物に追われる恐怖。激痛。必死の状況からの救済。
 あまりの状況の変化に、思考が追いついていなかった。
 ぼんやりとした様子で見上げる夏海の仕草に、女性は優しく微笑みかける。

「大丈夫ですよ。心配することはありんせん」
「あなた、は………」
「わらわの事は、アサシンと」
「あ、アサシン?」
「一先ずはここまで。お殿様がお待ちですもの」

 細い指先が、夏海の唇を抑える。
 そうだ。まだ窮地から逃れたわけではない。

「馬鹿めッ! 空中では身動きが取れまい。
 着地点さえわかれば、仕留めるのも容易い事よ!」

 地上に座す暴君が、上空の二人に向けて咆哮を挙げる。
 そして驚愕すべき事に――次の瞬間、何も無かった大地に槍衾が生え揃う。
 否、槍ではない。杭だ。
 男の言葉通り、空中で身動きが取れないとなれば回避は不可能。
 まさしく必死の状況である。
 だが、不思議と夏海の心に不安は無かった。
 夏海を抱きかかえている女性――アサシンを名乗った彼女は、このような状況でも微笑んでいる。
 飄々とした微笑。自然、強張っていた身体が楽になる。
 果たして、アサシンは夏海の信頼に応えてくれた。
 地面へと迫り、杭に刺さるは決定事項と云わんばかりの状況において―――
  
 ――――とん、と杭の上にアサシンは降り立った。

 さも当然といった表情のまま、彼女はひらりと地面に立ち、夏海をそっと降ろしてくれた。
 対する男の顔は、先にもまして狂気の色が濃い。肌が泡立つほどの敵意。
 アサシンが離れたこともあり、自然と夏海は自分の肩を抱きしめる。

「あらあら、せっかちな御人だこと。
 殿方を焦らせるのも女性の嗜みとはいえ、
 わらわを貫きたいのであれば、睦言の一つや二つは囁いていただかないと。
 そのような様では、女人に嫌われてしまいますよ、お殿様?」
「この毒婦めが……。
 その様相からして真っ当な者ではあるまい。
 或いは――魔女の類か」
「姿形で見抜かれるほど、わらわは底の浅い女じゃありんせん。
 お試しになっては如何かしら、殿様?
 最も、そなたはランサーでしょうね。とても逞しい物をお持ちですもの」
「抜かせッ!」


39 :Fake/first war:08/09/06 17:57:19 ID:CnvVPM/4
 ぱッと弾けるようにして二人の姿が激突した。
 いつの間に取り出したのか、アサシンの手には短刀が閃き――
 ――次の瞬間にはその刀身が伸び、長刀へと姿を変える。
 そして繰り出されるのは、柳の枝のようにしなやかに曲がる変幻自在の剣技。
 まさしくそれは芸術の域に達した武術である。
 舞踏のように優雅な動きと共に、素早く刀が閃いて、刃が振るわれる。
 上下左右から迫り来るそれを迎え撃つのは、ランサーと呼ばれた男の剣だ。
 装飾皆無の甲冑と同様、無骨な刃と剣技は、確かに見栄えこそアサシンのそれに劣る。
 だが、それは転じて男の恐ろしいまでに積み重ねた、実戦経験の証左でもあった。
 剣を振るう度、轟と戦場に吹き荒れる激しい突風。
 それはアサシンの刀をも巻き込み、次々にその切っ先を叩き落す。
 否、そればかりに留まらない。
 最初こそアサシンが攻勢に出ていたが、次第にランサーからの反撃が混じり出し、
 ランサーの刃をアサシンが受ける数が上回り――――ついには戦局が逆転する。

「他愛も無い! そも、余と武で競う事が愚かなのだ!」
「殿方を退屈させては無粋の極み。ではこのような趣向は如何かしら?」

 次の瞬間、くるりとアサシンが蜻蛉を切ると、その姿が光へと変化した。
 字義通りの光速で迫り来る、その光の矢に貫けぬ物は無い。
 それが道理だ。
 しかしランサーもまた、常識を超越した存在。
 そのような物を前に道理が通じる筈も無し!

「小癪也!」

 呵呵と笑った暴君の姿が、光の矢に貫かれ、崩れるように夜闇に消えた。
 ――否、そうではない。
 周囲に響き渡る無数の羽音。きぃきぃと甲高い鳴き声。赤い瞳。
 蝙蝠だ。
 無数の蝙蝠の群れへと転じて、矢を擦り抜けたのだ。
 光矢が地面に刺さり、元の娘の姿――アサシンへと戻る。
 次の瞬間、機を逸さずにアサシンへと襲い掛かるランサー。
 だがしかし、その姿は蝙蝠ではなかった。
 瞬きほどの間に蝙蝠は集合し、狼の姿へと変えていたのだ。
 牙を剥いて迫り来る巨大な狼。その姿は世に知られるどんな猛獣よりも獰猛である。
 逃れる術などありはしない。
 だが、その予想をも覆す事ができるのが――彼女だ。


40 :Fake/first war:08/09/06 17:58:03 ID:CnvVPM/4
「まったく――少々がっつき過ぎではないかしら」

 次の瞬間、とんと地を蹴った女の身体が宙を舞った。
 何ら予備動作を伴わない大跳躍。
 先ほど夏海を救ったのと同様の驚異的な身体能力の発露である。
 くるりと宙を返り、アサシンが夏海の傍らへと降り立つ。

 ――――尋常ならざる戦い。
 とても夏海の理解できるようなものではなかった。
 思考が追いつかない。
 何が何だかわからない。
 自分が何に巻き込まれたのかもわからない。
 呆然としたまま様子を見守っていた彼女が我に返ったのは、
 不意に空を見上げたランサーが、地を蹴って竹林の中に消えたからだった。

「――――へ?」
「マスターに呼ばれたのでしょうね。あの様子では、相当餓えてらしたようですし。
 お怪我はありませんか、マスター?」

 あまりにも拍子抜けする戦闘の幕切れ。
 呆然としている内に、ぺろりと彼女が夏海のシャツをまくりあげる。
 慌てて押さえ込もうと手を伸ばすが、あっさりお腹から胸までを曝け出され、
 先ほど蹴られた時にできたのだろう痣が露になった。
 我が事ながら痛々しいと夏海は顔をしかめる。

「まったく、あのお殿様ときたら……女人の肌に疵でも残ったらどうするつもりなのやら。
 でもこれなら、まあ、肌にも命にも別状はありんせん。わらわが治して進ぜましょう」
「え、あ、ちょ……ちょっと、待って。ごめん。あ、あたし何が何だか……。
 その前に、何なの、えっと、アサシンだっけ? 説明してくれないかな?」
「それは良いのですけど――あのお殿様が引き下がった理由が、問題ですわ。
 向こうの方から、大きな魔力を持つ者が来られるようで。お迎えします?」
「勘弁してよぉ……もうやだ、うちに帰りたいよぉ……」

 泣いたって何にもならないけれど、もうどうしようもなかった。
 へたりこんだまま、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
 そりゃ、小さい頃に苛められたことくらいはあった。
 溺れて死にそうになったこともあった。
 お婆ちゃんに怒られるのも怖かった。
 でも、こんなにも間近で死の恐怖を感じたのは初めてだった。
 我慢の限界だ。もう嫌だ。もう怖いのは嫌だ。

「……でしたら、わらわがお送りしましょう。どちらですの?」
 
 真上から聞えた優しい声。
 目尻に浮かんだ涙を、ごしごしと擦る。
 ――うち。
 そういえば随分と前にも、そんな事を言われた気がする。
 あの時は――あの時は、誰が言ってくれたんだっけ?

「…………兄さん」

 ぽつりと呟いた。
 この時間だ。父さんや母さんはまだ帰ってないだろう。
 お婆ちゃんは自分の様を見れば凄く心配する筈だ。
 でも、兄さんなら。
 ――兄さんに逢いたかった。
 ゆっくりと腕を伸ばして、周囲に散らばったままの本や巻物を鞄に仕舞いこむ。 


「……兄さんのお店に、つれてって」

41 :Fake/first war:08/09/06 17:59:10 ID:CnvVPM/4
―――Interlude


「つまり、僕に協力しろってェ事ですか、それは」
「難しいお話ではないでしょう、ええと……」
「優介。管代優介です」
「ユースケ。貴方はわたしを手伝うだけで良いんですもの。
 聖杯はわたしが必ず手に入れるのですから、ね」

 パレス・ミズサバ最上階。
 昼過ぎから夕方にかけての穏やかな日差しを浴びながら、たおやかに笑う黒衣の美女。
 その姿を見て、対面に座る優介はハァと気の無い返事を零した。
 無理も無い話だ。
 今の彼の心境を二言で表現するとこうなる。

 面倒臭ェ。
 帰りてぇ。

 やる気なんざこれっぽっちも無かった。
 というか自意識過剰すぎじゃないかこの女とまで思っていた。
 当然、口に出したりはしないが。
 立場的には明らかに彼の方が下であるし、怒らせるのは不味い。

 ファーティマ・アブド・アル・ムイード。
 
 没落した名門魔術師一家の末娘でありながら、恐ろしいほどの天才。
 時計塔が誇り、協会が期待する、魔術師業界のホープ。
 これで二十歳を越えたばかりだというから、なんともはや。
 その上、彼女は家督を継いだわけではない。つまり魔術刻印を持っていないのだ。
 全て独力で、様々な魔術を行使できるとなれば、それは―――……

(たった一人で、新たな家を作ることも可能、か)

 まったくもって末恐ろしい。
 今年の時計塔は入学早々寮をぶっ壊すほどの新人もいると聞くし、
 下手をすれば魔術師の黄金時代が再び訪れるのではないか、とか何とか。
 まあ、優介にとってはどーでも良い話だ。
 「」には興味も無い。魔術師として成り上がる野心も無い。
 一生ぐーたら過ごして生きてられれば良いのである。
 まったくもってして駄目人間であった。
 問題なのは、彼女が『協会から派遣されたマスター』という一点だ。
 親父が妙な組織と取引をした挙句、それが発覚。
 魔術協会から物凄い勢いで睨まれてしまったのが、今の優介である。
 このままでは文字通り首が飛んでしまう。
 穏便に済ませたい旨を伝えると――彼女、ファーティマが現れた。
 つまり「聖杯を協会に寄越すなら許してやろう」という事。
 ……勘弁して欲しい話である。
 結局、自分も殺し合いに参加しなけりゃならないわけだ。



42 :Fake/first war:08/09/06 17:59:42 ID:CnvVPM/4
 それより気になるのが――部屋に漂っている異臭だ。
 やけに革張りの家具が多いから、その臭いかとも思ったが、違う。
 魔術的な香りの類とも思えない。
 そしてファーティマや、その背後にて微笑んでいる家族達の誰も気に留めていない。
 不気味だった。只管に。
 美人であるだけに、どうにも。

「それで、答えはイエス、ノー?」
「選択できるような身分じゃないですよ、僕は」
「なら契約成立、ね。よろしくお願いしますわ、ユースケ」

 たおやかに微笑むファーティマに頷きながら、内心で優介は溜息を吐く。
 勘弁して欲しい。本当に。
 そのまま丁重に挨拶をして部屋を出て、そこでようやく気がついた。

 ――――あれは腐敗臭だ。

 思わずうへぇ、という気持ちが顔に出る。

「糞。面倒臭ェ女だよなぁ……本当」

 大体、何処まで本心で語っているのやら。
 が、しかし協力体制は結んでしまった。
 となれば、契約を反故にすれば、もっと面倒臭くなる。
 ……やれやれだ。
 最上階から長い間エレベーターに乗って一階に降り、さっさと駐車場へと向かう。
 白スーツのポケットからキーを取り出して愛車に乗り込み、やっと一息。
 これから仕事が山積みになってるのに、まったく。

「御館様ー、御館様ー」
「なんだうっさい」
「ちょっとばかし卑怯臭くはないで御座ろうか。拙者、そーいうのは苦手なので御座るよ」

 ――――と、不意に背後から声が聞えた。

 やはり異常な光景である。
 何せ『他には誰も乗っていない』のだから。
 だというのに優介は、特に気にした様子も無い。不機嫌そうに声を返す。

「仕方ないだろ。僕ァ面倒臭いのが嫌なんだ。
 相手の陣地に乗り込んで攻撃されてその場で対策考えるなんて面倒臭い。
 だったら先に対抗手段を打って置くほうが楽に決まってるだろ?」
「まあ、魔術師といえど人間四人に負ける拙者では御座らぬからして」
「……本当に"人間"が四人だったのかねえ、あれは」

 やけに人形めいだった、ファーティマの家族を思い浮かべる。
 立ち振る舞いや表情などは確実に人間のそれだ。
 だが、指示が無ければ動けない辺り、あれは――……。

43 :Fake/first war:08/09/06 18:00:17 ID:CnvVPM/4
「しかし大丈夫だったんで御座るか?
 ぶっちゃけ、あの部屋にアサシンでもいれば拙者には如何ともし難く」
「ほら、こいつを見ろ」

 エンジンをかけながら、助手席に置きっぱなしだった『板』を背後へと放る。
 実に不可思議な板だった。
 太極図のような意匠を見る限り大陸系の呪術によるものなのだろうが、
 不可思議なことに四方をラテン語が囲っており、周囲には日本語も入り混じっている。
 何より特徴的なのは、全体に掘り込まれた様々な武具の文様であり、
 注視してみれば、その刻印の中で、弓の絵だけが輝いているのがわかった。

「ふむ……こいつは何で御座るか?」
「霊器盤―――の模造品だか偽造品だか。
 召還されてる英霊の数と種類が一発でわかる板らしい」
「ほほう。世の中というのは随分と便利になったんで御座るなぁ」
「いや、世の中とは関係ないだろ。
 まあ僕ので見れるのはこの街の中にいる奴だけだけど、十分だろ?」
「するってぇと、つまり、今この街にいるのは――」
「弓矢。つまりアーチャーのサーヴァントだけ、ってわけだ」
「となれば、あの女人は英霊を召還していないわけで御座るか」
「まあ、召還するとしても今夜辺りだろうなぁ……。
 街の状況を掴んだ頃合だろうし、早く呼び出す方が選択肢も広い」
「他のマスターはどうなんで御座ろう?」
「正直な話わからないな。
 土地の管理者である僕、協会から派遣されたミス・ムイード、後はナチスから一人。
 これで三人だ。あとの四人は想像も――いや、一人はできるのか」

 うわ面倒臭ェと心の底から呟いた優介はハンドルを切る。
 恐らく……血筋だけで考えるならば、水佐波で一番マスターになる可能性の高い人物だ。
 もっとも今現在はムイード家同様に衰退し、魔術なんぞとは全く無縁なのだけれど。

「見張っとかないと、本当にマスターになっちまった時に面倒だよなぁ……」
「御館様、べつにバレなきゃ問題ないと昔の偉い人が言っていたで御座るよ」
「バレるんだよ、確実に……僕は管理者なんだから、把握してるのは当然なんだ」

 つかお前が昔の偉い人だろうがと吐き捨てる。


44 :Fake/first war:08/09/06 18:00:47 ID:CnvVPM/4
 ああもう糞親父め、なんて面倒臭い揉め事を残していきやがったんだ。
 やらなきゃならない事が多すぎて、どれからこなして良いものやら。
 夕暮れが迫りつつある街中を大蛇で走りながら、思い切り舌打ちをする。
 ――幸先の悪い事に、渋滞に巻き込まれてしまったらしい。
 何か向こうで事故でもあったようで、救急車が止まっているのが見えた。
 事故の現場でも見てしまったのか、大蛇の横をツインテールの少女が走っていった。

「……面倒臭ェ」
「御館様ー、御館様ー」
「ああもう、何だうっさい!」
「拙者腹が減ったで御座るよー」
「……はぁ? お前、飯とか必要なのか?」
「必要に決まってるで御座る!」
「面倒臭ェ……」
「出来れば今朝食べた"カレー"なる物をまた食してみたいので御座るが」
「…………レトルトで良ければ作ってやるよ」
「わあい! ボンカレーはどう作っても美味いので御座るよー!」

 っていうか。
 僕が呼び出したの、本当に英霊なんだろうか。

 聖杯戦争開始間近だというのに、優介の胸には不安以外何もなかった。

45 :Fake/first war:08/09/06 18:01:17 ID:CnvVPM/4
以上ここまで。

プロデューサーさん、バトルですよバトル!

46 :名無しさん :08/09/06 18:04:01 ID:TwMfnFly
アイマス自重wwwwともあれGJwww

しかし夏海の鯖は口調からもふもふかと思ってたけどごーいんとは・・・・
鯖はスレで言われてた組み合わせで行くのかな?


47 :名無しさん :08/09/06 18:10:56 ID:A4yF4Zqo
投下乙です
ダメだこのマサ、早くなんとかしないとw
何気に人生を謳歌してるな、主に食生活でw
そして、ジュニアはマジ前途多難そーなのでガンガレw

48 :名無しさん :08/09/06 18:45:17 ID:fbcYe8sP
GJ
変身能力持ちの二人の戦いは熱かったぜ

つーかゴーインの性能アサシンらしくねww
ジュニアw金あるんだから、レトルトじゃなくてレストランぐらい連れてってやれよww

49 :名無しさん :08/09/06 19:12:44 ID:0Kv62qd+
GJ!
早い!
上手い!
読みやすい!
無難な鯖選びで読むほうも安心だ

50 :名無しさん :08/09/06 22:13:37 ID:R0L1z9AN
GJです、頑張ってください

51 :名無しさん :08/09/06 22:44:56 ID:fbcYe8sP
住民リストの彼らは出演することはあるのだろうか
かなりアレなのばかりだから出ないと思うがww
久路礫嗣(くろ・れきし)
瀬海瀞福花(せかいせい・ふくか)
針巣熾音(はりす・しおん=パリス氏ね)
辺田井信司(へんたい・しんじ)
三枝南伊笛(みえな・いてき)
炉利邪内藤積満根(ロリじゃないとツマンネ)
瀬賀有瑠(せがある)

52 :名無しさん :08/09/07 01:04:37 ID:ZHej0xsB
GJ!
シグルド好きな俺としては登場に期待してます。
がんばって下さい

53 :名無しさん :08/09/07 01:47:08 ID:fSzKqSCz
乙!
wktk

54 :名無しさん :08/09/07 23:34:00 ID:R+WtYHem
大蛇の走っていったツインテール少女って、あの黒娘だよな・・・当然事故は“彼”の事故なわけで
ってことは次回あたりでみことが鯖召喚か?優介はそれを監視するのかな?楽しみだ

55 :名無しさん :08/09/08 06:04:17 ID:fGhj5rm6
いぃやっほおおぉぉぉぉぅ!最ッ高ォォォォゥゥ!!

>アサシンチーム
ごーいんのキャラが想像と違ってたんで噴いたが、これはこれで。
崑崙の仙女のイメージが強く出てるんだろうか。

>ランサーチーム
シトー、この時点でかなり吸血衝動に蝕まれてるんだな……気の毒に。
あと、こいつらが引き上げざるを得なかったほどの相手とは?

>アーチャーチーム
>>47同様、ダメだこのマサwwwとは思った。
あと>>48、きっとジュニアはレストランに連れて行くのも
「金かかるし面倒臭ェ」と思ってるんだよ!多分。

>ファーティマ
ふしゅるる〜ふしゅるる〜毒ガス腐敗臭〜……ごめんなさい。
前回から早速のサービスカット乙です。

>>51
いや、無いから!無いから!流石にwww

56 :名無しさん :08/09/08 14:54:40 ID:f8x3H0wu
>>55
ランサーチームの撤退は、雁夜のように戦闘時の魔力供給の衝撃にこれ以上耐えられなかっただけでは?
シトーの場合は飢餓感とあいまって、ランサー自身がマスターの限界をある程度察したとか…多分

57 :名無しさん :08/09/08 16:30:26 ID:DlSVB8PO
つーかjrって絶対インスタント食品好きだよなぁ。
それなりに美味く、早く、安く、技術が要らない。
サッポロ一番醤油味が好みとみた。

58 :名無しさん :08/09/08 21:33:30 ID:7FHKwRvf
>>55
妄想だがランサーチームが引き揚げなければならない相手は
ナチ子の有力候補だったあいつしか思い浮かばない

59 :名無しさん :08/09/09 22:42:40 ID:t7aNo5ZG
・マスターの魔力切れによる撤退
・ナチ子&チートマン強襲
・ムドー&鉄鼠強襲
・黒崎八重の謀略

ランサーチーム撤退の原因はこの4つのどれかかな

60 :名無しさん :08/09/09 22:56:43 ID:afPDe0Gf
・太陽が出てきて気分が悪くなった

も追加で

61 :名無しさん :08/09/10 11:36:53 ID:dgDAdKG3
>>59
待 て 最 後www

アレか!?隠しボスか!?黒幕倒した所に高笑いしながら現れて
全部のネタばらしをした挙句、
「それも私だ」とか言ってくれちゃうのかヲイ!?

……まぁこの子は成り立ちからして、みことからオミットされた
闇の部分を引き継いでる一面はあるからなぁ。
この子がマスターになってもストーリー的には
盛り上がりそうではある。

因みにこの子が鯖召喚した場合、出てくるのが
「あのお方」しか浮かばないのは何故でしょうねw
ほら、本編4次ランサーの上司だった……

62 :名無しさん :08/09/10 21:28:57 ID:cF+vcymd
確かに、仮に八重が鯖召喚しちゃったら、ほぼ間違いなく「あのお方」だろうな
次点で、トロイア戦争で活躍した、名前の由来が『嫌われるもの』であるという説のある外道な「あのお人」

63 :名無しさん :08/09/10 23:08:28 ID:8wUsjxpZ
今なら大淫婦さんとか出てくるかもしれない

64 :Fake/first war:08/09/11 18:54:22 ID:hUfPZVoU
―――Interlude2

 ――夜闇の中を、一匹の獣が駆けていた。
 目前に存在する草木、枝葉の悉くを踏みしめ、蹂躙し、
 不幸にも目前に立ちはだかった虫や動物の悉くを喰らい、貪り、
 一目散に林の中を走り抜ける。

 ややあって、不意に開けた場所へと獣は飛び出し、其処で止まる。
 不可思議に空間が広がった其処は、地面に奇怪な文様が刻まれており、
 また獣が辿り付くよりも前から、噎せ返るほどの血臭に満ち溢れている。


「ぬう。逃したか」

 ――――ぼとり。
 獣が声を発すると共に、何かが地に落ちた。
 と同時に、獣の身体が崩れ始める。
 ――ぼとり、ぼとり。

 鼠。
 無数の鼠である。
 獣の全身から、鼠が次々に剥がれ落ちていく。
 その数、一匹や二匹などと言った生易しい数字ではない。
 数えるものなどおらず、また数えることも不可能な数。
 であるならばそれは、正しく無限といえた。
 
 そうして、獣から全ての鼠が剥がれ落ちれば――其処に一人の男の姿があった。
 無道である。

「惜しいことをした。少々出遅れてしもうたか……」

 血痕。魔力の残滓。
 如何に外道の術を学んだとはいえ、無道はさして鋭くは無い。
 だが、それでもここで何が起きたのか、如実に理解する事ができる。

 闘争だ。
 闘争が行われていたのだ。

 神秘と魔術と幻想とがぶつかり合う死闘。
 聖杯戦争、恐らくはその初戦。
 目的とされる願望器でもなく、魔術師としての栄誉でもなく、
 たんに戦いに身を投じる事を目的としていた無道にとって、
 その初戦を逃してしまったのは、間違う事なき失態であった。



65 :Fake/first war:08/09/11 18:55:07 ID:hUfPZVoU
「――が、まあ良い。まだ争いは始まったばかり。
 拙僧の力量が試される機会もあるというものだ」

 で、あるならば。今ここで死ぬのは本意ではない。
 足元で鼠どもが苛立たしげに声を上げていた。
 そう、彼らは餓えていたのだ。
 怒りに満ち溢れ、餓えに苛まれ、永久に癒える事なき狂気に陥った獣。
 それこそが無道の呼び出した英霊――否、反英霊である。

 自ら望んで召還した狂気の怪物は、無道にとって満足の行く存在だった。
 狂戦士という枠に填められたサーヴァントは、強大な力を獲得すると共に、
 生前以上の狂気に支配され、誰彼構わずに牙を剥くようになる。
 主となった者は、敵を倒すよりも前に己の英霊の制御に集中しなければならない。
 加えて、気を緩めることがあれば自らが殺され、喰われてしまう可能性もあった。

 即ち、弱い魔術師が一か八かの賭けとして呼び出すなり、
 或いは弱い英霊の触媒しか手に入らなかったマスターが、
 それを解消するために狂戦士として呼び出す以外には、
 望んでバーサーカーを召還するような輩は存在しない。
 自らの首を絞めるのと同意なのだから。

 しかし、無道はそれを望んだ。
 己に課せられた試練をより困難にする為に。
 そして、概ねのところは満足の行く重荷となっている。

 恐るべき事に、この僧侶は令呪を一画も損なう事無く、バーサーカーを御しているのだ。
 精神性さえ抜きにすれば、歴史に名を残す高僧と同等か、それ以上の力量だと言える。
 だが――それも間近に闘争の臭い、即ちサーヴァントという餌の臭いを嗅ぎつけたが故だ。
 ようは目の前に飴があるから、鼠たちは無道に従っていたといえる。
 それが無くなれば、どうなるかは自明の理だ。

「……ふぅむ」

 徐々に高まっていく緊張感の中、さして気にした様子もなく天を仰いだ無道は、
 木々の間からも見る事ができる巨大な塔の存在に気がついた。
 夜の暗闇の中にあっても尚存在感を持つそれは、記憶が正しければ高級ホテルであった筈だ。

 人は多い。
 そして人の魂とは即ち力である。
 力を得た狂戦士はより強大となり、無道が制御する事は困難となる。

 望むところだ。無道は嗤った。

「況や、金銭に拘るような俗物であるのならば。
 拙僧の試練の糧となる事もまた因果であろう」

 無道は人である。
 故に、自らの意思で人を襲う。
 いまだ悟りを得ていない彼は、その為にこそ人を襲う。
 無道は正しく人であり、
 即ち同時に、恐るべき狂人でもあった。

 ――鮫のような笑みを浮かべ、再び狂気の獣達が夜の街を駆け抜けていく。
 

 ―――Interlude out

66 :Fake/first war:08/09/11 18:58:01 ID:hUfPZVoU
3.

 ――嫌な予感しかしない夜、というのはある。

 そしてそんな夜には、決まって何かしら起こるものだ。
 いつだってそうだった。
 そして決まって、誰かが死ぬ。
 別に、それ自体は良い。
 "あの頃"は誰も死なない事こそが異常だったのだから。
 理由はどうあれ、毎日毎日、誰かが死んだ。
 
 だが――糞。
 
「戦争なんざ、半世紀も前に終わってるんだぞ、糞」 

 まったく、嫌な夜だ。
 夏も終わりに近づいたというのに今だ風は蒸し暑く、
 熱気をはらんだ風が肌に纏わりつき、酷く不快だった。
 
 店の軒先に立ち、火の消えた煙管を噛みながら、鉄人は顔を顰めた。
 ――――夜闇の中から聞える足音。次第に見えてくる姿。
 女性に抱えられた、見知った娘。
 ぎしり、と煙管が軋む。楽観なぞできよう筈もなかった。

「―――あ」

 一方の夏海はと言えば、その苛立たしい顰め面に、何故か安心を覚える。
 帰ってきた。
 帰ってこれた。
 じんわりと目尻が熱くなるのを、擦って誤魔化して。

「あ、と……アサシン――だっけ。ごめん、もう良いから、降ろして」

 とん、と地面に降立って、そのまま兄の元へと駆け寄った。
 ――目の前には戸口に立ち、黙って此方を睨んでいる兄の姿。
 と、言うか露骨に機嫌が悪そうな顔。
 付き合いが長い夏海も、そんなに見たことのない表情だ。
 でも、わかる。
(……兄さん、本気で心配してくれたんだなぁ……)
 参ったなあと頬を掻いてみるが、どうしようもなく胸が温かくなる。
 申し訳ないという思いも勿論あるけれど、込みあがってくるものはどうしようもない。
 さっき擦ったばかりなのに、また涙が出てきそうになって、慌てて目を擦る。

「え、と……た、ただいま」
「馬鹿者」

 べしりと頭を叩かれる。
 ――と、続けてわしゃわしゃと髪が引っ掻き回された。

(…………これは。撫でてくれてる、のかな?)

 痛みに顔を顰めるべきか、それとも喜ぶべきか。
 曖昧な顔をして夏海が見上げると、鉄人は顰め面のまま後方へと視線を向けていた。
 釣られて振り返れば、その先にいるのは着物姿の美女――アサシンだ。
 微笑ましいものを見るような表情をしているのが、夏海は少し気に食わない。
 同じような感想を抱いたのだろう。
 困ったような顔をして片手で頭を引っかいた鉄人は、溜息混じりにこう言った。

「あー………とりあえず、二人とも上がれ。で、茶でも飲め」

67 :Fake/first war:08/09/11 18:59:02 ID:hUfPZVoU
 蔵間堂の居間は、先ほど夏海が立ち去った時とさして変わらぬ様相だった。
 たった数十分前にも訪れたというのに、何だか無性に懐かしい。
 ようやく家に帰ってこれたような落ち着いた気分になる。
 愛用の座布団に腰を下ろし、マグカップに注いでもらったお茶を飲んで、一息吐く。
 こうして落ち着いていられるのが嘘のようだと、夏海は思った。

「とりあえず、茶請けにゃ饅頭だ」
「……ん、ありがとう」
「わらわも頂いて良いのかしら?」
「……ああ。構わん、喰え」

 卓袱台を囲んで、三者三様。
 相変わらず鉄人はしかめっ面をしているし、アサシンは何を考えているのかわからない。
 夏海はと言えば、お茶を啜って顔を上げた。

「――で、ぶっちゃけ。あたし、どうなってるんでしょうか?」
「………お前、まだ状況がわかってないのか?」
「うん。もう、何がなんだか」
「――あー……ったく。ちと待ってろ」

 言うなり立ち上がった鉄人は、夏海の前に回りこむと、その眼前に指を突きつけた。
 人差し指と中指だけを立てた独特の握り方に彼女が目を瞬かせていると、
 鉄人は素早い動きで、その指を横へと振るう。
「臨」
 続けて縦に指で空間を切る。
「兵」
 横へ。
「闘」
 更に縦横交互に、
「者、皆、陣、列、在」
 そして最後に、
「前」
 と呟いて横に指を振るい、鉄人は大きく息を吐いた。
 何がなにやら理解していない夏海は、きょとんとした様子で首を傾げる。
「――なにそれ、今の」
「九字護身法――魔除けの呪いだ。何かされてるとも限らんからな。
 とはいえ、俺程度の腕じゃあ気休めにもならんが」
「……あら、魔術師だったのですか?」
「昔齧った程度だ」
 アサシンの問いに呟きで答え、また自分の座布団へと腰を下ろす。
 自分のやった事が夏海にとって何の得にもならない、と言わんばかりの表情だ。
 煙管に煙草を詰め、煙草盆に先端を翳して火を灯し、一服。
 煙を吐いて、宙を漂うそれを睨んだ鉄人は、仕方ないと呟いた。


68 :Fake/first war:08/09/11 19:00:10 ID:hUfPZVoU
「で、まだ夏海は何が起きたかをわかってねえ、と……。
 まあ……俺は大方予想はついているし、ある程度は知ってるんだが。
 詳細は知らん。アサシンとか言ったな。後で説明頼めるか?」
「ええ。その方が、夏海様のお役に立つでしょうから」
「よし。……んじゃあ、夏海。まず、魔術師って知ってるか?」
「えっと、魔法使いとかのこと?」
「似たようなもんだ。最も『魔法』が使えるのは何人もいないんだが。
 ともかく――大前提だ。魔術師は実在する」
「…………へ?」

 いきなりの発言に、夏海は目を丸くした。

 ……何か兄さんが変な事を言ってる。
 言葉が無い。
 というかアレですか。魔法の杖を振るってピリカピリララ、とか。
 そんな人たちが本当にいるって、兄さんは言うんですか?

 彼女の思考を察したのだろう、鉄人は苦笑混じりに頷いた。

「いるんだ。冗談でもなんでもない、真剣な話として」
「に、兄さん。ちょ、ちょっと待って。それ――本気?」
「本気だとも。俺が嘘ついた事は無いだろう?」
「そ、そりゃあ……まぁ……」
「……続けるぞ。
 で、まあ、連中は普段は裏でゴソゴソやってるだけだ。
 大昔はともかく、現代じゃ表に出て来ることは滅多にない。
 だから、別にこっちから関わろうとしない限り、大抵は害が無い。
 無いんだが……夏海。帝都大地震――じゃねえや。関東大震災って知ってるか?」
「……うん、学校で習ったもん。ええっと……1923年におきた地震、だよね」
「上等だ。水佐波もご他聞に漏れず、そいつの被害を喰らった。
 海が近いからな。津波だとか何だとか――……」

 一瞬、鉄人が口を閉ざし、手元の湯飲みを煽る。
 何となく夏海もそれに習って、マグカップを口元へと運ぶ。
 アサシンはと言えば、何を考えているのか良くわからない笑顔のまま、饅頭を齧っている。
 何かを思い出したのか、しばらく鉄人は湯飲みの中を睨んでいたが、
 ややあって顔をあげ、再び口を開いた。

「で、だ。どうしたわけか……まあ、理由は俺も良くわからん。
 その地震のせいで、この土地は魔術師にとって都合の良い代物になっちまったらしい」
「都合の良い……って、どういう事?」
「霊地ってんだが、あーっと……どう説明すりゃ良いかな。
 まあ、言い方は色々だ。
 魔力が多いだとか、気脈が通ってるとか、風水的に素晴らしいとか。
 地震で色々そういうのの流れが変わって、水佐波を通るようになった。
 意味はわかるか?」
「……まあ、何とか、だけど」
「こいつに目をつけたのが、第二次世界大戦中の同盟国だ」
「同盟国?」
「ナチスドイツ第三帝国」
「ま、またナチスだなんてそんな……。兄さん、映画の見過ぎだって」
「活動映画なんぞ何年も見てねェよ。つか、ナチスが映画の題材か」

 時代の流れだねぇと呟いて煙管を噴かす姿は、どう贔屓目に見たって怒っていた。
 いや、苛立っているというほうが的確かもしれない。
 少なくともこの場にいる人間に対して、怒りは向けられていないのだから。


69 :Fake/first war:08/09/11 19:00:31 ID:hUfPZVoU
「で、俺が知ってるのは連中が『霊を使って戦争をする』とかいう儀式をやろうとしてた、って事だ。
 そいつには上等な土地が必要で、本来はもっと西の方でやってたらしいんだが、
 まあ土着の魔術師連中から奪うよりは、自分たちの手で再現した方が早いからな。
 とはいえ、連中がそれで何を企んでるのかまでは俺は知らん。
 わかってるのは、遂に連中が儀式とやらを完成させて、実行しちまったらしい、って事だ」

 そして一服。
 口にくわえた煙管を放し、かつりと煙草盆に打ちつけた。

「詳しいことは、そっちの娘さんが知っているんじゃあないのかね」
「……ええ。マスター、夏海様が参加したのは、聖杯戦争という儀式ですわ」
「せーはい、せんそー?」
「聖杯という願いを叶えるものを手に入れるために、皆で争うという儀式」
「あーっと……何か不思議なモノを七個くらい集めると願いが叶う、とか?」
「七つというのは合っておりますが、もう少々、荒事が関わってくるのですよ。
 戦争と申しました通り――七組で殺しあって、最後の一組になれたら、願いが叶うのです」

 夏海の問いに笑いながら答えたアサシンは、そう言って『聖杯戦争』について語り始める。

 参加者は魔術師が七人。
 召還される英霊は七騎。
 剣士、弓兵、騎兵、槍兵、魔術師、狂戦士、暗殺者。
 文字通り人類の規格外と言える存在を、この七種類の型に当て嵌めることで召喚し、
 それらと共に――英霊を武器にして、魔術師同士で殺しあう。
 勿論、居場所を用意したからと言って、ほいほいと英霊を呼び出せるわけもない。
 何かしらの代価――英霊に対しての報酬が必要なのだ。

「それが聖杯。つまり――英霊も主も、立場自体は変わりませんわ。
 願いを叶える為に、殺しあわなければならない――という意味では」

 即ち。
 聖杯を欲するならば。
 汝、自らの力をもって最強と証明せよ。

 ――これが『聖杯戦争』なのだ。


70 :Fake/first war:08/09/11 19:01:13 ID:hUfPZVoU
「…………でも、何であたしがマスターに選ばれたんだろう?」
「さあ、わらわも其れについては知りませぬ」
「……お前の婆ちゃんもそうだし、俺もそうだが。
 霊が見えるくらいだ。どっかにそういう血筋が混じってるんだろう。
 だけどな、夏海。お前は素人だ。降りろ」

 沈黙。
 語るべき事は語った。
 巻き込まれた事象を夏海は理解しただろう。
 であるならば。
 決めるのは夏海だ。
 少なくともその一点に関しては、アサシンも鉄人も同意だった。
 マグカップに視線を降し、ちびちびと夏海はお茶を啜る。

(降りたほうが良い、んだよね)

 当然だ。
 先ほどの林で遭遇した恐怖と、今後も付き合っていかなければならないのだから。
 とてもそれには耐えられそうにはない。
 今だって、そうだ。
 兄さんがいる。
 アサシンという女性もいる。
 だからこそ、こうして平静でいられるが、
 二人がいなければ、怖くて怖くて堪らなかっただろう。

(だけど……)

「……。ねえ、英霊は叶えたい願いがあるから――聖杯戦争に参加するんだよね?」

 不意に顔を上げた彼女の言葉に、皆の注目が集まる。
 少しだけ居心地が悪そうに座りなおして、夏海は問うた。

「なら、アサシンにも願いがある、って事で良いのかな?」

「ええ、そうですね。わらわにも、叶えたい願いが、一つ」

「……あたし、叶えてあげたいんだ。
 今まで、死んだ人が何を望んでいても、何も出来なかったから」

「ば、」

 ここまで黙って聞いていた鉄人の声が、思わず裏返る。

「馬鹿かお前は! 死人のために生きてる奴が命放り出してどうするんだ!?」


71 :Fake/first war:08/09/11 19:01:52 ID:hUfPZVoU
「む、馬鹿は酷いよ、兄さん。
 ほら、あたし『視える』だけで今まで何も出来なかったからさ。
 ……もしかしたら『視える』あたしが選ばれた、意味があるのかもって」
「馬鹿にも程があるってんだ……糞、糞、あー、もう。
 どうせ俺が止めたって勝手に動くんだろうなあ、糞……」

 ばりばりと頭をかき回す鉄人。照れたように頬を掻く夏海。二人を見守るアサシン。
 どうせ動くくらいなら、手元で見ていたほうがまだしも安全だ。
 幸いにして自分は多少の心得もある。この娘は放置しておく方が危なっかしい。
 鉄人が溜息混じりに結論を出すのに、然程の時間はかからなかった。
 
「わぁったよ、仕方ねぇ。俺も付き合う。アサシン、夏海の面倒みてやってくれ。
 あと婆ちゃんに電話しろ、電話。こっちに泊まるって。
 あっちの家までドンパチに巻き込む必要はねぇやな」
「やたっ! さすが兄さん、話がわかってくれて助かるよ、うん!」

 わあいと両手を上げてからバックを探って、携帯電話を取り出す夏海。
 そしてありがとうございますと、口元に微笑を浮かべて頭を下げるアサシン。

 二人の姿を見やり、鉄人は深く溜息を吐いた。

 ――――こんな夜には、決まって何かしら起こるものだ。


72 :Fake/first war:08/09/11 19:02:33 ID:hUfPZVoU
以上ここまで!


アサシンの口調が安定しねえ! 説明パートは必須でも難産だった!
ああもう、普通子が蹴っ飛ばされてるシーンとかノリノリでかけたのに!
あと某氏の宝具変更関連も合わせて、俺の寿命がストレスでマッハなんじゃよー!

73 :名無しさん :08/09/11 19:05:20 ID:Sh266HTS
おつかれー。
しかしごーいんの願いがまるで想像付かないのネ・・・

74 :Fake/first war:08/09/11 19:08:29 ID:hUfPZVoU
というか、聖杯戦争全体のプロットはできているし、
お話の流れとしてもプロットはできているのだけれど、
視点を複数に分散すると、ブレてしまうのが難点。
かといって普通子視点に絞ると、他所で起きている事はわからないし。

ちょっと其処だけ悩みつつ書いているので、ええ。

75 :名無しさん :08/09/11 19:55:23 ID:yR7KJcLH
乙ー
しかしピリカピリララでふいたwww
懐かすぎるww

76 :名無しさん :08/09/11 20:06:03 ID:CIqJG2EP
>>74
乙です。
今のままでも特にブレてて分かりにくいとかいう印象はないですし、いいんじゃないでしょうか。

77 :名無しさん :08/09/11 20:25:46 ID:JlcBQyQS
乙です〜
もうなんというか…… 面白すぎて止まらんです。

78 :名無しさん :08/09/11 20:39:20 ID:vO2X1Ph4
GJ、>>59の予想は3番が当たりでしたか。
来週はいよいよ教授展開ですね!ハザード系は大好きだ!
……となるとあの人があの鯖を呼んであの宝具でああいう事に?
wktkが止まりませんよムッハァ。

現状、製作過程を全く知らない人に一から読ませるならともかく、
我々に見せるだけなら十二分に解りやすいと思いますよ。
次回も楽しみにしてますとも!

79 :名無しさん :08/09/11 21:12:25 ID:iBjbamsd
乙!

80 :名無しさん :08/09/12 09:14:22 ID:Mboli3Kp
GJ
確か、ナチ子は触媒用意してるんだよな
思いつくのは、ファフニールの鱗とか牙と体の一部、竜の血を浴びた時に背中に張り付いてた葉っぱかな

触媒
Jr      ?
ムドー    ?
ナチ子    ?
普通子    ゴーインの話が書かれた巻物
おっぱい子  ?
シトー    吸血鬼であると言うことが触媒になった?
ファティマ  ?

81 :名無しさん :08/09/12 17:11:39 ID:2uJg4qHm
ここって、別に召還した鯖やストーリーが違ってもおkか?
今Jrルート書いてるんで、キャストが違って心配なんだが・・・

82 :名無しさん :08/09/12 17:31:04 ID:NYaZ/6Xe
>>81
良いとは思うが、スレ分けるなりした方が無難じゃね?
一つのスレで二つの物語が同時進行すると読み難いし、
元は同じ設定だから偶々似たような場面に入っちゃって
読んでる方が区別つかなくなったりする可能性はある。

かくいう俺は、現在の設定を叩き台に、あちこち改変した
自分流の設定と物語を構築中。
ま、SSとして日の目を見ることは無いだろうけど。

83 :名無しさん :08/09/13 00:45:12 ID:JdHd8Eaz
皆聖の一作品のために別スレ立てるのはどうだろう?
一応、ここは『皆鯖』板だからなあ

84 :名無しさん :08/09/13 02:00:47 ID:eiXOS6Bl
>>83
皆鯖で作られた鯖が出てくる物語なわけだし、別に問題はなくね?

85 :名無しさん :08/09/13 06:22:00 ID:AIDnAB4z
みんなでかんがえる聖杯戦争スレ11
http://yy62.60.kg/test/read.cgi/minasaba/1220420418/
を再利用すればいいと思うよ。
実質的に12で止まっちゃってるし。

86 :名無しさん :08/09/13 06:44:43 ID:YTfsYoDD
タイトル変えれば区別はつくんでね?

・・・でもそれなら全部SS投下スレでやれば良くなっちゃうな

87 :名無しさん :08/09/14 23:59:30 ID:LUOf6HQW
結局ここは他作品投下可能なのか?
俺は構わないと思うんだが

88 :名無しさん :08/09/15 03:33:07 ID:6xTVGPLu
嘘予告のような短いのならまだしも、スレひとつ消費しても終わりかねない
長さの作品が2つも3つもごちゃごちゃになってるのは正直読みづらい
ちょっとしか書かないならSS投下スレでやればいいし
ある程度書くつもりなら新しいスレ立ててもいいんじゃない?

89 :名無しさん :08/09/15 14:51:44 ID:UoRrnqvt
おれも>>88に賛成かな

90 :名無しさん :08/09/15 17:28:00 ID:Vxmo4JJG
じゃあ混乱しないように形式を決めようか
こういうの決めないと、後発が書きにくい

スレタイは『皆聖・本編投下スレ「(作品名)」』でいいかな?
Fake/first warも2スレ目に突入したらタイトルを入れてもらうってことで

91 :Fake/first war:08/09/15 17:42:24 ID:5sKk/C9D
4.

 むかしむかしの話をしよう。

 あるところに、ひとりの女の子がいました。
 女の子はふつうの女の子です。
 お父さんが大好きで。
 みんなのことも大好きで。
 野山を駆けるのが大好きな。
 そんな、ふつうの女の子でした。

 ある日のこと。
 どこからか来た女の旅人が、女の子を見ていいました。

「あの子はとても良い子だ。
 世のため人のため、悪と戦う術を教えたい」

 当然、女の子のお父さんは怒ります。
 お父さんは女の子が大好きでした。
 大きくなったら恋をして、
 恋をしたら好きな人と結ばれて、
 幸せに生きて欲しいと思っていたのです。

 でも、女の子は違いました。
 女の子は知っています。
 えらい人から国を守ってくれと頼まれた人たちが、
 自分達のためにだけ、与えられた力を使っていることを。
 その人たちのせいで、色んな人が苦しんでいることを。

 女の子は幸せでした。
 大きくなっても幸せなままでしょう。
 でも、他の人は幸せになれないかもしれない。

 だから女の子はお父さんに黙って、旅人についていったのです。


92 :Fake/first war:08/09/15 17:42:46 ID:5sKk/C9D

 女の子はがんばりました。
 どこかの誰かの為にがんばりました。
 剣の使い方をおぼえました。
 空を飛ぶように走る方法をおぼえました。
 姿を変える術も、いろんな薬の作り方もおぼえました。

 がんばって、がんばって、そして五年が経って。

「もうお前に教えることは何もない。
 世のため人のため、その力を使いなさい」

 旅人はそう言って、女の子をほめてくれました。
 美しく育った女の子は、お父さんのもとへと帰ります。

 でも、お父さんは女の子が帰ってきても、喜んでくれません。
 だから女の子は、お父さんのためにも、悪い人をやっつけました。
 毎晩、毎晩、毎晩、家を抜け出しては悪人をやっつけます。
 でも、お父さんは喜んでくれません。

 それは、あたりまえの事でした。

 なにが善いことで、なにが悪いことなのか。
 どうしてただの人に決めることができるでしょう。
 どうしてただの人が裁くことができるのでしょうか。

 それができる女の子はもう、女の子ではありません。
 ――女の子は人ではなくなっていたのです。





93 :Fake/first war:08/09/15 17:43:06 ID:5sKk/C9D
「…………うあ゛ー……」

 年頃の娘にあるまじき声をあげて、高波夏海はもぞもぞと布団から這い出した。
 視界に広がる古びた木の天井。それを見て、昨日は兄さんの家に泊まった事を思い出す。
 まあ、別にそれは変わったことじゃない。
 小さい頃から何度も泊まってるし。着替えもちょっと置かせて貰ってるし。
 問題なのは―――

「……あー……変な夢みた、なぁ……」

 ――記憶にぼんやりと残っている、奇妙な夢。
 まったく、昨日に続いてへんな事続きだ。
 変な男に襲われて、死にそうな目にあって、助かって。
 一生に一回でも経験したくないような事ばっかりだった。
 おまけに魔法使いだとか聖杯戦争だとか。わけがわからないし。

「まあ、やると決めたらやるしか無いよね」

 もっとも、高波夏海はえらく前向きだったのだけど。
 そもそも幽霊が見えることからして変だったのだ。
 ちょっぴり自分が『まとも』な世界から一歩横にずれている事くらいは、
 夏海だってしっかりと理解しているのだから。
 今更、魔術とか英霊とかが出てきたって驚く方がどうかしてる。

「よいしょーっと!」

 気合を入れて、ばさりと寝巻きを脱ぎ捨てる。
 健康的に日焼けして引き締まった体は、実はちょっと自慢だったりする。

「ふんだ。あんなのがあっても泳ぐのに邪魔なだけだもんねー」

 みことや葵みたいに大きいものなんていらないのだ、とか何とか。
 着替えのTシャツと短パンを手繰り寄せながら、そんな事をぼやく。

 結局の所、やっぱり気にはなる年頃なのだ。



94 :Fake/first war:08/09/15 17:43:27 ID:5sKk/C9D
「お、兄さんのご飯なんて久しぶりー」

 ややあって居間へと出てきた夏海を迎えたのは、食卓に並んだ料理の数々だった。
 作ったのは誰かといえば、それはもう一人しかいない――鉄人だ。
 まあ、アサシンという可能性も無くは無いだろうけど、和食が作れるとしたら驚きだけども。
 既に卓袱台の横で正座してる二人の間に入って、夏海もまた正座する。
 こうして皆揃ってから『いただきます』が高波家の風習だ。

「昔は料理なんてまったくできなかったのにねぇ、兄さんは」
「『士別レテ三日ナレバ刮目シテ相待スベシ』だ。何年経つと思ってるんだ?」
「……っていうかさ。あたしが料理教えるまで、兄さんどうやって生きてたの?」
「馬鹿者。昔は男子厨房に立ち入るべからず、つってな。
 男が料理作るなんざ有り得ねェって決まりになってたんだよ」
「昔は昔、今は今ですよー、だ」

 まあ、なんだかんだ言って、家庭の味が一番だ。
 お婆ちゃん仕込の夏海にしてみれば、やっぱり和食が良い。
 そりゃあ目玉焼きにソーセージにサラダにフレンチトースト、みたいな、
 ちょっとお洒落な朝食に憧れたりもするのだけれど。

(やっぱりメニューからして発想が貧困だものね、あたし)

 きっと豪華な洋風の朝食っていうのは、もっと凄いに違いないと思う。
 こう、グレートでゴージャスでデリシャスな感じ。
 お洒落なテーブルクロスを引いて、紅茶とか珈琲とかこう、素敵な飲み物があって、
 スクランブルエッグ(炒り卵と表現すると途端に和食だ)とかなんか横文字の料理が一杯並ぶ、みたいな。
 とはいえ、別に今食卓に置かれている朝食が嫌い、というわけではない。
 むしろ最高だ。

 牛蒡、大根、人参、里芋、豆腐の入った"おみおつけ"。
 御釜で炊かれた御飯には、ほんのちょっとオコゲがついて。
 ふんわりと焼かれた金色の卵焼き。
 そして近海で取れたカワハギの煮付け。
 夏の終わりの今が旬の白身魚。
 きゅっと締まった身に、何と言っても『肝』が良い。
 特にこれと言った郷土料理は無いけれど、
 美味しい野菜と魚とがふんだんに使われたこの食卓は、
 まさしく山と海とに囲まれた水佐波の味だった。


95 :Fake/first war:08/09/15 17:43:47 ID:5sKk/C9D
「うん、やっぱり肝の苦味が良いんだよねー」
「お、夏海も言うようになったじゃねえか。
 昔は『にがいにがいー』ってぴーぴー言ってた癖に」
「兄さんうるさいー」
「………ふふっ」
「どーしたの、アサシン。急に笑ったりして」
「いえ、仲の良い兄妹だなぁ、と」
「ん。別にあたし、兄さんの妹じゃないよ?」
「………そうなのですか?」
「うん。兄さんっていうのは『親戚の兄さん』の事だもん」
「………ま、そんな事はどうでも良い。どうするんだ?」
「? どうするって?」
「聖杯戦争」
「あー……」

 忘れてた、というわけではない。
 ないけれど。
 考えたくなかった、というのは本音だ。
 昨夜、参戦を決意したし、戦う気持ちは揺らがないが、
 いざ殺し合いに身を投じるのだと――本気で考えたくは無い。
 ひどく曖昧な心境。それを誤魔化すように、夏海は頬を掻く。

「とりあえず、どうすれば良いかなぁ……アサシンは、どう思う?」
「わらわは戦場の大英雄というわけではありんせん。
 個人の戦術ならともかく、兵法についてとなると――」
「……………って事は、俺か」

 溜息を吐いて、鉄人は頭をばりばりと引っ掻いた。
 茶碗に残った白米を一気に掻き込み、湯飲みのお茶を煽る。

「多分、防戦になりゃ負けるなぁ。
 拠点作りっつーか築城っつーか、水佐波自体は海と山があるからな。
 それこそきっちり城さえ作って迎え撃てば、負ける要素は無いんだが、
 生憎とそんな時間も場所も人手も資材も無ぇと来てる」

 煙草盆を手繰り寄せ、煙管に火を灯す。
 鉄人にはわかっていた。
 実際のところ――状況はあまり芳しく無い。
 夏海は完全に素人のマスターだ。
 魔術的には弱く、軍事的にも尚弱い。
 その上、引いた手札はアサシンと来てる。
 単純に騎士や槍兵とまともに遣り合って勝てる存在ではない、のだが。

「そういやアサシン。お前さん、真名はなんだ?」
「……あ。そうそう、あたしも気になってたんだ。教えてよ」
「名前――さあ、覚えてはおりませぬ」

 そう言って彼女は、普段の飄々とした笑みではなく、何処か淡い微笑を浮かべた。
 寂しげなのとも違い、悲しいのとも違う。懐かしいというのも適切ではあるまい。
 ただ、少し遠くにあるものを見るような、そんな表情だった。

「ただ、聶隠娘とさえ呼んで頂ければ」
「―――――――じょーいん、じょう?」
「……こいつは驚いた。仙人――や、仙女様じゃねえか」
「……兄さん。どーいう事した人なの?」
「本人に聞け、本人に」


96 :Fake/first war:08/09/15 17:44:25 ID:5sKk/C9D
 聶隠娘。
 仙術を学び、夜な夜な悪人を退治し、悪仙や妖術使いと戦ったこともある、中国の武侠の一人。
 その性質は、アサシン――暗殺者という種別だけでは留まるまい。
 彼女の持つ宝剣が名のある銘刀でさえあれば、剣の英雄として知られていたに違いないだろうし、
 その仙術の腕前は、古代の物語に登場した魔術師達に勝るとも劣らない。
 くわえて言えば、彼女には英雄譚に付き物の『負けた』『殺された』という最期が存在しない。
 これといった弱点が無いという意味においては、随分と戦術に幅のあるサーヴァントと言える。

 ――――が。

 それはアサシンとして優秀というだけの事だ。
 彼女の性格、夏海を救ってくれたという事に関しての情を全て切り捨て、
 単純に駒、戦力としてみた場合、とても楽観できる状況ではない。
 少なくとも義侠に厚い人物であるから、裏切られる事だけは思考の外に追いやっても良いだろう。

(信用はできる。が――信頼はできねぇな)

 戦力として鑑みる限り、其処まで優れた手札ではない。
 至極あっさりと鉄人は評価を下す。そうしなければ生き残れない。
 そして悲しいかな。このアサシンこそが、此方の切り札なのだ。
 であるならば、それを駆使するしか生き残る術は無い。
 『創意工夫シ可能ニセヨ』だ。
 別に悲観するほどの事はない。こんな状況は慣れっこじゃあないか。

「防衛戦になりゃ、拠点の無い俺達が不利。かといって攻勢に出るほどの余裕も無い。
 となると――威力偵察って所かねぇ……」
「……なんか今日は知らない単語が一杯でてきて良くわかんないんだけど。
 というか兄さんが難しいこと考えてる時点で驚きだったり。
 いりょくてーさつって、なに?」
「ようは、戦って相手の戦力を確かめる、って事だ。
 向こうの手札がわからん事にゃ、行動のしようもねぇ」
「つまり?」
「早い話が出た所勝負」
「うわー……早速前途が多難だよぅ」

 がっくしとうつ伏せる夏海に対し、鉄人は仏頂面のまま煙管を噴かす。


97 :Fake/first war:08/09/15 17:44:54 ID:5sKk/C9D
 或いは。
 もっと楽に戦う方法だってあるのだ。
 ――今までのは『勝つ』為の思考であって、『生き残る』為のそれではない。
 『生き残る』だけならば、ようはこのアサシンがあっさりと敗退すればそれで良いのだ。
 マスターである事を明かさぬまま、サーヴァントだけが消滅すれば、夏海が狙われる事は無い。
 少なくとも『アサシンのマスター』を探すものは出るかもしれないが、
 それと『高波夏海』がイコールになる可能性は、現時点では限りなく零に近い。
 しいていうならば昨夜、彼女たちを襲ったというランサー達くらいか。

(真っ先に叩けるんなら、槍兵どもなんだろうが……)

 となれば令呪でも何でも使って、アサシンをランサーどものところに送り込んでしまえば良い。
 アサシンが勝とうが、負けようが、これで聖杯戦争における懸念は無くなる。
 口先八寸で夏海を言いくるめてしまえば、それで済むのだ。
 だけど、だが――糞。
 どうしてそんな事が言える?
 初めて会話できる霊と出会い、救えるかもしれないと決意している少女に対して、
 その幽霊を捨て駒にしろ、などと。

「………………しゃあねぇ。とりあえず、飯食ったら街に出てみるか。
 闇雲に探すよりかは、マスターと出くわす可能性も高いだろ」

 まあ昼間に連中が動くかどうかはともかくとして、だが。

98 :Fake/first war:08/09/15 17:47:37 ID:5sKk/C9D
以上、投下完了。

皆鯖の住人にとっては「さっさとドンパチしろ!」かもしれませんが、
まあ、もう少し!もう少し!待って頂ければ幸いかなあ、と。

他の人の作品の投下その他『皆聖の本編』については、
別に「ここは俺のスレだぁーっ!」とか主張する気もないですし、
俺が書き出した頃は、他に本編書くような人がいなかったのでー。
ぶっちゃけ、俺も読んで見たいので是非書いていただければ!

とはいえ勿論、ルールが決まれば俺もそれに従いますし、はい。

99 :名無しさん :08/09/15 20:01:31 ID:T7A5MV9r
乙華麗。
やっぱ手駒がアサシンだと厳しいね〜w
本来玄人向けのクラスだから尚更。
次回は他の面子の描写かな?
楽しみにしてますとも!

100 :名無しさん :08/09/15 20:05:01 ID:LtjflIwP
投下乙です
あー ごーいん嬢の心残りはおとーさんのことか
確かに自分が(心労で)殺してしまったようなものだからな
人生経験つんで理解すれば確かに後悔しそうだ

101 :名無しさん :08/09/15 20:55:14 ID:K8QH4Sc8
ちょっとごーいんの夢は早すぎると思う。
そこまでマスターとの繋がりはまだ深くもない内にやっちゃうのはどうかなー

でもGJ。最後まで完成させてくれることを願う。

102 :名無しさん :08/09/15 21:39:43 ID:+vsWeOpC
シグは背中の一点が弱点だからそこを狙えっていうけど、
それなら他の鯖は全身が弱点みたいなもんだよな?
勝てるのかよw

103 :名無しさん :08/09/15 21:43:42 ID:K8QH4Sc8
シグ戦闘スキル一つもないから不意打ちに弱いイメージあるよw
後、魔術以外の精神干渉とかも駄目でしょ。

更にシグはフィンのせいで最後まで個性が確立できなかったのが痛いw

104 :名無しさん :08/09/15 22:08:50 ID:+vsWeOpC
魔術以外の精神干渉・・知らんかった。
シグ好きな俺としては頑張ってもらいたいが

105 :名無しさん :08/09/15 22:27:42 ID:LtjflIwP
魔術以外の精神干渉……つまりはティルたんを握って狂化させたりですねっ!
(もうバーサーカーは召還されてます)
まあ、冗談なしにしてもシグルドは宝具でもないとまず倒せないからなー
強大な敵としてがんばってもしいものです

106 :名無しさん :08/09/16 00:57:25 ID:tqerlFji
以前皆聖スレで「チート四天王登場!」の話題が出た事があったが、
今にして思うとその面子は、「SSに登場させちゃいけない鯖
ワースト4」でもあったのだな〜と思う。バランス的な意味で。
敵に回った場合、主人公側が反則でも使わなければまず勝てないorz。

……いや、そんなもん書き手の技量次第でどうとでもなるだろと
言われればその通りではあるのだけれど。
正直、ごーいんでジーク倒せるかと聞かれたら物凄く厳しいと思う。
うp主となっちゃんがんがってくれw

107 :名無しさん :08/09/16 03:28:01 ID:sQDf5LOY
乙です。方針決定がスムーズで良い感じです。

>>106
共闘とか、マスター狙い・・・今回のメンツじゃ無理っぽいなぁw
ガンバレ夏海!!

108 :名無しさん :08/09/16 06:35:44 ID:BBCHrdfB
みことと共闘すりゃ何とかなるか?
サバが何かはまだわからんが、オルフェだとすれば、対魔力は宝具で突破出来るし、
物体操作での足止めも可能と来てる。

109 :名無しさん :08/09/16 07:00:11 ID:4uI/iu2o
>>103
メロンパン好きでツンデレ、くらいだったからなぁw
その上キャラとして定着しているかも微妙だしw

110 :名無しさん :08/09/16 09:09:38 ID:fVs38Ng/
実は妄想心音ってシグの天敵宝具だよなw


111 :名無しさん :08/09/16 10:21:09 ID:dHt7cGUl
妄想心音は魔力でレジストできるのでは?
Bランクで確実とはいえんが

112 :名無しさん :08/09/16 13:44:56 ID:tqYWF42l
雑談は他所でやるべきじゃね?

113 :名無しさん :08/09/16 18:29:25 ID:dHt7cGUl
すまない

114 :Fake/first war:08/09/22 14:11:30 ID:l+ci3TI9
5.

 ――最早、カール・ノイマンという男は限界であった。

 彼は何もかもが破綻した男だった。
 人間であるのに生きる為に血液を求める。
 或いは怪物であるのに私利私欲で人間を襲う。
 
 矛盾である。
 磨り減っていく精神、肉体、魂。
 辛うじて微かに原型をとどめていた人間性が次々に零れ落ち、
 残っていくのはカール・ノイマンという名前の怪物という要素ばかり。

 己が人間であると思うならば、彼は吸血鬼に成り果てた時に死ぬべきであったし、
 生きたいと願うのであれば、彼は自分が人間で無い事を認めるべきだったのだ。

 相反する二つの要素を一つの器に納めた時点で、彼の末路は決定されたと言っても過言ではない。
 こうして極東の地の名も知れぬ森の中で土を食み、血に餓えるような醜態を晒しているのも当然といえた。

 無論カールも理解していたのだろう。でなければ、このような土地を訪れるわけがない。
 即ち、矛盾した式を解くのは『奇跡』でもなければ不可能だ、という事を。

 彼がその情報を知る事ができたのは、それこそ正に奇跡だったのかもしれない。
 冬木の地で行われた聖杯戦争。そして、水佐波で行われている新たな聖杯戦争。
 だが、それが同時に彼の更なる不幸の始まりでもあった。

 ――召還されたサーヴァントは、具体的な媒体が無ければマスターの性質に依存する。

 カールが召還した槍兵は、僅かに人間性を残しただけの怪物である。
 英雄として人々を救いながら、人を殺めて血を啜る事を良しとする怪物。
 加えて、大きく力/血を消費したカールは、通りがかりの男を死に至らしめ、
 更には一人の少女――マスターであったが――もまた毒牙にかけようとした。
 その指示に対して彼のサーヴァントは、一切の躊躇を抱かずに従った。
 またパスが繋がれば、互いの過去も夢と言う形で共有せざるを得なくなる。
 血。
 血。血。血。血。血。血。血血血血血血血。血。
 ランサーの記憶は、悉くが紅一色だった。
 戦場で彼は殺し、故郷を守る為に殺し、民衆の為に殺し、串刺した。
 それは真っ当な人間であれば吐き気を催すような所業。
 如何なる題目があったとしても、英雄たる者の行為ではない。
 怪物なのだ。彼のサーヴァントは。
 そして――それを呼び出したマスターも。

 正しく、カールは自らの鏡像を突きつけられた形となったのだ。


115 :Fake/first war:08/09/22 14:11:56 ID:l+ci3TI9
「……………は、ァ……はぁ……ハァ………は、ァ…………」

 故に。
 カール・ノイマンは奔っていた。否、奔らざるを得なかった。
 昼日向はともかく、夜闇が迫れば彼の時間が始まるのだ。
 感覚は異常な程に研ぎ澄まされ、筋肉には力が戻り、脳には思考が蘇る。
 だからこそ理解できた。
 知覚出来ぬ程の遠方から響く、無数の獣どもの気配。
 微かに聞える草木を食らう音。獣を喰らう音。
 それが神秘の産物であり、進行方向が街である事も。

 そしてカール・ノイマンは、その進路に先回りをする事すら可能だった。

 自らが 人間で あるの ならば
 彼は、奔らねばならなかった。
 関係ないと無視する事もできたろう。
 サーヴァントが一騎でも減るならばと傍観するべきだったかもしれない。
 だが、彼は奔った。
 怪物としての能力を用いて、人間である事を証明する為に。

 矛盾した思考回路。
 重ねて言おう。既にカール・ノイマンは破綻していたのだ。

 で、あるならば。

 破綻した存在が、まともに目的を達成できる筈もなく。

「ハァ……はッ……は―――ッ!?」

 ――――その前に障害が現れるのも、自明の理であった。
 夕闇の中、白い少女が彼の行く手を阻む。
 それだけならば、何と言う事もない。
 殺す。血を啜る。無視をする。どうにでもできた。
 だが。
 その、黒衣は。
 髑髏の徽章は。
 半世紀を経ても尚、忘れられるわけがない……ッ!


116 :Fake/first war:08/09/22 14:12:35 ID:l+ci3TI9
「ナチス………ナチスの、豚がッ! まだ、生きていた、のか……ッ!!」
「グーテン モルゲン、吸血鬼。化け物風情に豚呼ばわりされるのは不愉快ですね」
「違う、私は――私は、人間だ……ッ! 貴様らが、私を、このような―――」
「戯言は大概にして下さい、吸血鬼。前大戦から経ったと思っているのですか?
 貴方の肉体に行われた改変は、我々とは無縁のモノです。
 復讐をするつもりだったのならば、貴方は愚鈍に過ぎました」
「どちらが、戯言だ……ッ!」
 
 少女は、カールの怒りを鼻で嗤って退けると、その手に浮かび上がった印を見せ付けた。
 浮かび上がるのは三画の刻印――令呪。今、この地において、これが意味する所は唯一つ。

「別に貴方がたでなくとも構わないのですが。
 そろそろ閣下に首級を捧げなければならないというのに、行動が遅れました。
 手土産の一つでも無ければ申し訳が立ちませんので。
 吸血鬼、貴方を生け捕りにしたいと想います」

 きっと閣下にも喜んでいただけるでしょう、という言葉は既に耳に届いていなかった。
 この娘は生かしておけない。
 マスターだ。
 殺さなければならない/殺しても構わない。
 理由はある。
 許可もある。
 そして、彼女の横に剣士が出現するに至って――

「ラァァァンサァアァァアァァァァッ!!」
「行きなさい、セイバー」

 事ここに至れば言葉は不要。
 まず飛び出したのは赤銅色の肌を持つ剣士。
 迎え撃つのは禍々しい甲冑を纏った暴君である。


117 :Fake/first war:08/09/22 14:13:01 ID:l+ci3TI9
「貴様のような小童が、我に近づけるのか?」
「徹る」

 前進。

 対する暴君が指を鳴らせば、剣士の足元から槍が突き出した。
 否、杭だ。かつて幾多の屍を貫き、侵略者を防いだ杭。
 それがセイバーを直撃する。
 轟音が響き渡り――セイバーは片手の剣を盾にして、その場に留まった。
 踏ん張る足が地面に埋まり、その力は容易く大地を砕いてみせる。
 そして次の瞬間には、あいた左手を握り締めて杭へと撃ち込んでいた。
 小枝か何かのようにして杭がへし折られる。

 前進。

 次いで王が放つは無数の狼。
 剣士の肉体を牙が噛み、獣どもが四肢へと食らいつく。
 躊躇う事無く剣で叩き落し、拳で叩き潰した。

 前進。

 毒を孕んだ霧が剣士の肉体を包み込む。
 五臓六腑が腐敗する瘴気の最中を、彼は突き進んだ。

 前進。

 続けて現れたるのは流星雨の如き蝙蝠の群。
 次々に剣士の体へとぶち当たり、肉片を引き千切る。
 だが、彼は突き進むのをやめない。
 縦横無尽に剣を振るい、その悉くを切って捨てた。

 前進。
 前進。
 前進!

 ――肉薄。

 全身を血で染めながらも王へと迫った剣士に対し、
 暴君は呵呵と笑って口を開いた。


118 :Fake/first war:08/09/22 14:13:26 ID:l+ci3TI9
「宜しい。
 近づけるかと問うた余に、近づけると貴様は証明した。
 よって、ここに余からの言葉と言う褒美をやろう。

 ――近づくことを許可しない。 去ね」

 雲霞の如き閃光がセイバーの体を貫き、その身体を地へと縫い止めた。

 それ自体は先達ての初撃と大差無い。事実、行動自体は全く同じなのだ。
 ただ――あまりにも数が違った。
 それは正しく槍衾。
 如何なる英雄、猛者であろうと進撃を阻む、鉄壁の防備。
 誰が知ろう。
 この王こそは侵略者を阻む為に、怨敵の屍を串刺しにした男。
 祖国を守り抜いた名君にして、残虐非道な暴君。
 狂気に捕われた怪物。
 或いは、史上最も有名な吸血種。
 串刺し公、ワラキア公、ドラキュラ。
 ――ヴラド・ツェペシであった。

「主と同様に愚鈍ですね、王――いえ、悪竜の子」
「ほう、真名を見破ったのは褒めてやるが……余を愚弄するか、魔女め」
「吸血鬼が従える英霊とあれば、一目瞭然です。
 そして――――まだ、気付かないのですか?」

 娘は、蟲惑的な笑みを浮かべ、ついと細い腕を中空へと掲げた。
 唇を開いて紡ぐのは、大切に胸中に秘めていた想いを口にするように。

 Zugang―――Fevnir
「接続―――悪龍血漿」

 ――――槍衾の奥から、何かが聞えた。

「……まさか、馬鹿な」

 カールが驚きに言葉を喪い、

 咆哮。

 Drachen Leichentuch
「展開――是・竜血鋼鱗」

「彼奴は。あの小童の名は――」

 ランサー、ヴラド・ツェペシが眼を見開いた。

 咆哮。

「―――征きなさい、シグルド」
「御意」

 咆哮!!


119 :Fake/first war:08/09/22 14:14:41 ID:l+ci3TI9
 瞬間、槍衾が弾け飛ぶ。
 沈みかけた夕陽の残滓に煌く木片。
 その中を突き進む――――存在があった。

 大きく張り出した角。
 人にあらざる金色の瞳。
 鋭く尖った爪。
 禍々しいシルエット。
 だが、それだけではない。
 自らの骨格をも歪めて生み出された悪夢の如き装甲。
 限界まで稼動している霊核――魔力炉心が吐き出す膨大な熱量。
 内包したエネルギーの総量は、小規模な超新星に匹敵すると言っても過言ではあるまい。
 それらがたった一つの指向性を持って、今ここに解放されていた。
 もはや貴様は敵ではないと宣言するかの如く、生えた禍々しい角を振りかざし。
 三千世界に響き渡るほどの殺意を孕んで、その"化け物"は顕現する。
 ――悪竜。
 まさに、その一言だった。

「シグルド…………ジークフリート、かっ!?」
「ヤー、肯定です吸血鬼。我らがゲルマンの大英雄、シグルド。正しく最優の剣霊の座に相応しい」
「チィイィィィッ!」

 ランサーが遂に腰の物に手をかけ、抜剣。数多の兵を屠った音速の斬撃が空間を切り裂く。
 吸血鬼の膂力を持ってして振るわれる剛剣の一撃を、セイバーは受け止める素振りすら見せない。
 その刃は装甲に当たるや否や、硝子のように割れ、砕け散った。
 長い年月の間、戦場で鍛えられた銘剣の末路としては酷くあっけない最後。
 だが、宝具ですらない武具である以上、それは致し方ない事。ランサーにとっても覚悟の上である。

 狙うのは――――己の持つ貴き幻想。
 宝具。その真名開放の一撃を持ってして、この大英雄の鎧を貫くのだ。

「餓え渇く鮮血の――――」
「が、ああぁあぁあぁあぁぁあぁっ!?」
 ランサーの肉体から血液が流れ落ちる。
 そして、同時に膨大な魔力消費がカールの肉体を苛んだ。
 如何にその宝具が消耗の少ないタイプであったとしても、必殺の一撃を加えるには何本あっても足りる筈が無い。
 供給される魔力は、そのまま溢れる血液へと転じ、それは即ち杭となる。

「―――粛杭…………ッ!!」


120 :Fake/first war:08/09/22 14:15:43 ID:l+ci3TI9

 無限とも思えるほどの尖杭の乱立。
 零距離から放たれる土石流の如き宝具の群に対し、シグルドは同時なかった。
 対抗するのは、その左掌のみ。

「な、ぁめるなぁあぁあぁぁぁぁぁあぁぁッ!!」

 ランサーの絶叫が響き渡る。
 しかし――

 圧壊。

 まさに悪夢のような光景。
 如何に悪魔と呼ばれた反英霊であっても、ヴラド・ツェペシは座に祀られる程の猛者である。
 その宝具の一撃を。
 たとえ真名を開放していたとはいえ。
 素手にて握りつぶすなど――――最早、正気の沙汰ではない!

 ――ランサーにとって不幸だったのは、彼が「悪竜」と呼ばれた猛将の息子であり、
 自身もまた「悪竜の子」を意味する字名を持ち合わせていた事だった。
 シグルド、ジークフリート、そう呼ばれる北欧の大英雄は、相手が悪すぎた。
 なぜなら彼は『悪竜殺し』によって英霊となった男なのだから……!

「が、ァ………ッ」

 オーバーフローした魔力消耗によって意識を喪いかけたカールの最後の記憶。
 即ちそれは、宝具を阻まれた自身のサーヴァントが、セイバーの一撃によって心臓を貫かれる場面であり――

「アォフ ヴィーダーゼーエン。――――また後で、吸血鬼」

 ――――白い娘の、そんな甘い囁きであった。

121 :Fake/first war:08/09/22 14:19:28 ID:l+ci3TI9
以上、ここまで。
お休みとって真昼間からガシガシと一気に5話を書き上げた!
戦闘シーンはもうちょっと後にしておきたかったんだけど、
我慢できなかったんだよう!我慢できなかったんだよう!

がっかりランサーと言わないであげて。
実際問題、セイバーの防御宝具が大活躍できそうな相手が、
今次聖杯戦争だと彼しかいなかったからなので。
あと一応、プロット段階ではバーサーカーの軍勢相手に立ちはだかる
鉄壁のランサー槍衾!みたいなシーンもあったけれど
ちょっと邪魔になりそうだったんで泣く泣く割愛。

さすがに全部の鯖が大活躍する話は難しいんで、取り捨て選択はさせてくださいOTL
改めて菌糸類とか、虚淵氏の凄さを実感する今日この頃。
セイバーが本編であんまり勝てなかったのは仕方のない事なんだよなぁ、うん。

122 :Fake/first war:08/09/22 14:24:15 ID:l+ci3TI9
与太話ついでにもう一個だけ言い忘れていたことを。
セイバー&ブリュン組の戦闘BGMは「鴉、顕在」だったりしますぜ。

123 :名無しさん :08/09/22 14:39:28 ID:5Hox7lfe
投下乙です
ああ、確かに竜とよばれてたら設定的にも相性が悪そうだw
夜になってきたみたいだからこれで終わりではないだろうけど
吸血衝動をかかえて魔力枯渇気味のマスターと魔力潤沢なマスターでは
鯖以前に分が悪い気もひしひしひとw

124 :名無しさん :08/09/22 15:02:21 ID:wsxqt4Qc

シグルズ、強すぎワロスw
やっぱりヴラドではこいつに対抗できなんだかw
こいつを倒せそうなのって実質ラーマ(ヴラウマーストラで狙撃)しかいないもんな
ソロモン(竜血鋼鱗で七十二柱の”魔術”は無効化)やハーロット(でかい敵はグラムで消滅)

125 :名無しさん :08/09/22 16:40:54 ID:i0N79Ku4
乙です。やはりランサー=不幸の法則は健在だったか・・・。
捕獲されたカールの今後など、この先が楽しみです。

126 :名無しさん :08/09/22 17:21:55 ID:5Hox7lfe
>>124
ヴラウマーストラも単純攻撃宝具なので真名開放したら無効でない?
グラムで迎撃されたら終わりだし、あまり分が良いとは言えないよーな

秘密(に、しておきたかった)兵器のパリスを持ってくるのが一番楽な気がする

127 :名無しさん :08/09/22 18:10:15 ID:p5EmjrPb
>>126
いやいや、装甲ぶち破るんじゃなくて、肩甲骨の間を狙撃すると言う意味で書いた。
千里眼も高ランクで透化という気配遮断スキル持ってるから、暗殺兼狙撃で倒せるかもと言う意味で書いた。
弓兵の中で一番狙撃能力高いよなラーマ?

読み直して気付いたが、狼の群れが敵に向かうとか蝙蝠の群れになって敵を襲うとか戦い方がどことなくアーカードに似てるなぁ


128 :名無しさん :08/09/22 18:16:57 ID:5Hox7lfe
>>127
ここで言い合うのもアレなのでだが一応突っ込み
狙撃に向いてる『神刃(シャブダ・ベディ)』を使わずに
なんで『創世神の光明(ブラフマーストラ)』?
A++宝具なんて使って狙撃はネタの域だと思われ

129 :名無しさん :08/09/22 19:50:02 ID:edsPkDoa
「鴉、顕在」ぐぐったら滅茶カッコいい曲だった。サンクス

130 :名無しさん :08/09/22 20:55:21 ID:sfBP0kxG
>>124
孫悟空で真っ向勝負…

マスターが同格なら勝負になると思うんだ。
どっちが先に枯れるか。

131 :名無しさん :08/09/22 21:26:33 ID:oQODgSuW


>>124
カインがいるぜ

132 :名無しさん :08/09/22 21:38:27 ID:Un7eqzqd
>>124
おいおいパリスを忘れてるぜ

133 :名無しさん :08/09/22 21:41:15 ID:edsPkDoa
>>131
外道王あたりならカインの宝具、見破りそうだよな
んでもって瀕死の状態にしてから敵のマスターか一般人に無理矢理武器
持たせて力ずくで攻撃させればOK


134 :名無しさん :08/09/22 21:59:06 ID:edsPkDoa
バーサーカー「グウゥゥ・・・」
バーサーカーのマスター「な、なにをする気だっ!」
外道王「まあまあ、まずわしの槍を持て。」
バサマスター「なんなんだっ・・!?」
外道王「実はな、先ほどわしの宝具を使用した時にわかったんじゃが、
    こやつの宝具は消滅の原因となった相手も道連れにする様な
    類のものらしい。」
バーサーカーのマスター「ま、まさか・・やめてくれぇえーーーー!」
外道王「クハハハハッ!!やめられんっ!!」
                              とか

135 :名無しさん :08/09/22 22:33:11 ID:p5EmjrPb
>>134
正に外道w。
登場してないのにここまで、存在感を見せるとはw
実際、外道王の指ってどこまで知れるんだろうな?
使ってる場面的にディルの居場所見つけたり出来るようだけど
未来(基本的にこの指使ってるのは危機に陥った時だし、未来見えていたらディルに嫁取られるわけないし)はわからんようだけど


136 :名無しさん :08/09/23 00:21:49 ID:W2HZq7+N
>>135
一休さんのアレの豪華版じゃね?

推理力の大幅な向上

天気図を見ているフィン
フィン「マスター!全資産を先物に突っ込んで小麦を買え!大儲け出来るぞ!」

137 :名無しさん :08/09/23 01:01:21 ID:po4eSuIr
未来視はソロモンの悪魔の領分だろうな。

138 :名無しさん :08/09/23 02:07:05 ID:BLEc0mSk
よくよく考えたら夜のヴラドさんは『餓え渇く飲血の領地』の能力でほぼ不死身じゃなかったっけ?
さすがに心臓潰されたら無理なのかな?

139 :名無しさん :08/09/23 02:13:15 ID:W0bbfP7l
先読みはやめーよぜ。

140 :名無しさん :08/09/23 03:00:41 ID:mHwmezV0
というか雑談したいなら他所でやれよ

141 :名無しさん :08/09/23 23:05:23 ID:KRd5yw5r
き、きてれぅーーーー!?
GJだうp主。ジーク大好きな俺はこれで後半年は闘える!
ジークハイル!ジークシオン!ハイルサチーソ!(元の板に帰れ)。

感想。

神父!ジークが、一人だけ明らかにチートです!
神父!他の鯖が、勝つ所が想像出来ません!
イメージBGM聞いてみたらラスボス過ぎて噴いたw

ヴラドさんはあれだよ、序盤で敗退したと見せかけて
見せ場が出来るまで潜伏する積りなんだよ、きっと!
軍略持ちだからきっと後の事まで考えてるのさ!

さて、次回は?
月姫のあのシーン再びか、あんなに一緒だったのにか、それとも?

142 :戦隊?昭和ライダー?:08/09/25 18:05:37 ID:sIsl9cop
戦力差が・・・

シグルド組=ブロリー   ブラド組=セル
鼠組=メタルクウラ×? マサ組=屁たれ王子
ごーいん組=?    

これぐらいあるなw


143 :名無しさん :08/09/27 07:30:57 ID:CejaWjWm
シグルドとジークフリードのいいとこ取りの上に何をトチ狂ったのか
真名開放で強化型ゴッドハンド化する能力まで付いてるからなぁw


144 :名無しさん :08/09/28 14:57:34 ID:RKbMibvj
>>143
同じ時期に外道王フィンがいたからなw
どんなにチートしても「きっと外道王ならなんとしてくれる!」的なものがあったしwww

145 :名無しさん :08/10/01 18:00:29 ID:mIUziCKt
>>144
外道王は後に作られたんじゃないか?


146 :Fake/first war:08/10/12 18:01:39 ID:aMeOzNko
あー……気にしてくれている人がいるみたいなので、一応此方で発言をば。
大丈夫、生きてます。まだ残ってます。まだ書いてます。
ちょっとモチベーションがガッツリ減ってますが(苦笑)
今月中には再開したいなぁ……。

147 :名無しさん :08/10/12 18:05:32 ID:Vtu5IpQM
YOUには密かに超期待してるガンガレ超ガンガレ!w

148 :softbank126008133068.bbtec.net:08/10/12 18:08:40 ID:ksRaJ0Cr
>>146
期待してます。頑張って

149 :名無しさん :08/10/12 18:15:34 ID:nubidFaM
>>146
お疲れ様です。色々ストレスたまることも多いでしょうが
ゆっくりでも続けていただければ幸いです。

150 :名無しさん :08/10/12 23:20:24 ID:H8nsal44
皆聖本スレが死んでるので、ここが最後の砦っす
期待してます

151 :名無しさん :08/10/13 00:45:13 ID:y3p7lOCt
楽しみにしてるよ〜。無理しない程度にね!

152 :名無しさん :08/10/13 00:58:46 ID:PYJqHfAt
とても期待してます。

153 :名無しさん :08/10/13 06:25:42 ID:IR1fTAOW
ずっと待ってます。でも、頑張りすぎて無理しないでください。

154 :名無しさん :08/10/13 12:20:08 ID:UTW6rix5
俺も楽しみにしてるんでゆっくりやってくれい

155 :名無しさん :08/11/15 23:05:59 ID:xtPS6kEb
本スレもぼちぼちと書き込みあるようになったし、こっちも復活して欲しいなあ

156 :Fake/first war:08/11/28 15:36:06 ID:8RQNZiul
――Interlude3

 で。

 なんかサムライがカレー食ってる。

「―――――――――」

 理解できない。
 何で喫茶店にサムライが居るのか。
 なんであんな煮立った釜みたいなカレーを食っているのか。

 それも凄い勢いで。
 額に汗を滲ませて、水などいらぬ、
 一度手を止めれば二度とさじが動かぬわ、という修羅の如き気迫。

 というか意地になってないかコイツ。食べるスピードが尋常じゃないぞ。
 もしかして美味いのか。
 あのスパイスとカレー粉と野菜を百年間ぐらい煮込んで合体事故のあげく
 インド人を右に!とか気合で避けろ!みたいな料理が美味いというのか。

 だとしたらまずい、カレーもまずいがこの店もまずい。
 アレ、絶対やばげな量のスパイスを入れてる。
 そうじゃなくちゃ色合いが説明できない。

「どうしたで御座る。さっきから一言も喋ってないで御座るよ、御舘様」

 にっこにっこと喜色満面の表情でサムライは言う。

「…………………………」
 
 用心しながら……いや、もう何に用心しているのか僕にも解らないが……ともかく用心して頷いた。

「――――――――――――――」

 じっと奴の動きを観察する。
 ……あ。スプーンがどんどん動いてる。
 コイツ、このカレーを完食する気なのか……と、喉を鳴らした時、
 不意にカレーの乗ったサムライのスプーンがこちらにゆっくり伸びてきた。

「――――――――――――――――――――――――」
「――――――――――――――――――――――――」

 視線が合う。
 サムライは腹が立つくらい楽しそうな表情で僕を見やって、

「御舘様も折角だから―――――――――――」
「―――――――――――――遠慮しておく」

 サムライはわずかに眉を寄せて、さっくりと「美味で御座った」とカレーをたいらげた。
 ……って。
 もしかしてコイツ、本気で僕に喰わせようと思ったんだろうか?


157 :Fake/first war:08/11/28 15:36:32 ID:8RQNZiul
「いやあ、カレーライスは日本人の魂に根付いた食事でござるなぁっ」
「……実体化して街を散策したいとか言って、やる事が喫茶店でカレーかよ。ふざけんな、死ね」
「御舘様、食事を馬鹿にしてはいけないで御座るよ! 腹が減っては戦は出来ぬと昔の偉い人が言うくらいであるからして!」
「お前が昔の偉い人だけどな」

 食事と言うのは一人で静かに孤独に食べるもんで御座るとか言い出す侍――
 ――即ちサーヴァントの一騎、アーチャーを眺めて、管代優介は盛大に溜息を吐いた。
 もしかしなくとも選択を誤ったのは確実かもしれない。この先生きのこれる自信が欠片も無い。

「まあ、其処まで慌てる必要も無いんだろうけどな。幾ら聖杯戦争が、数日間の短期決戦とはいえ。
 ナチスはともかく、基本的には外来のマスターばかりだ。素人でもなければ、昼間っから暴れるような真似はしないだろうし」
「本音は?」
「ぶっちゃけ面倒臭ぇ……」

 そもそも、冬木市で行われる『本来の』聖杯戦争においては、複数勢力の思惑が絡み合っている為、
 教会から派遣されてきた監督役が、いわば審判のような形で介入し、全てを取り仕切っている。
 神秘が表沙汰にならないよう隠匿するのも、その監督役の仕事なのだが――今回は違う。
 ナチスドイツの残党などという、B級映画でしかお目にかかれないような連中と、
 この土地の管理者――よりにもよって優介の祖父が、勝手に手を組んでおっぱじめた儀式なのだ。
 当然、協会と教会からは睨まれているし、マスターであるにも関わらず監督役として奔走しなければならない。
 一番嫌いな言葉が「努力する」で、二番目が「頑張る」である所の男には、荷が重過ぎる。
 口から魂が出そうな具合だった。

「昨夜も森の奥でドンパチやらかした奴がいたみたいだしさぁ……。
 騒ぎになってないから、巻き込まれた奴はいないっぽいけど。初日からだぜ?」
「ふぅむ。よほど好戦的な御仁が集まったので御座ろうなぁ……」
「勘弁してくれ……」
「あ、小向日殿!もう一杯お願い致す!」
「はぁいっ。ちょっと待っててくださいーっ。
 源さんって、ほんとーに美味しそうに食べてくれるから、あたしも嬉しいんですよぅ」

 心底から落ち込む優介と対照的に、にっこにこと笑いながら厨房に向かってかけていくウェイトレス。
 いつのまに仲良くなったんだというか、真名を明かしている辺りに問題を感じないのかというか。
 頭痛を通り越して胃痛さえ感じ始めた優介に、からからとアーチャーは笑った。

「それで、どーだったんで御座る? その、もう一人の魔術師ってのは」
「ああ、まあ率直に言うと、可能性は無いと思う。
 うちの御先祖さんとの権力争いに負けてからは衰退して、もう魔術師でも何でも無いしな。
 末の娘が魔力だけ持ってるのは前に確認してるけど――聖杯戦争には参加しないだろう」
「と、言いますと?」
「親は大企業の重役。家族関係は良好。学校でも特に問題は無いし、友人関係にも恵まれている、と」
「……満たされまくってて逆に腹立ってくるで御座るな」
「ついでに言えば、惚れた腫れたの騒ぎに街中巻き込んだ挙句、現在は恋人と大はしゃぎだ。
 これだけ揃ってて、聖杯がわざわざ選んでマスターにする事は無いだろう。
 仮に選ばれたとしても、戦って死んだら元も子も無いからなぁ……」
「じゃあ、まあ、一から歩き回って探すのが一番って事で御座るか」
「だな。……面倒臭ェ」
「仕方ないで御座るよ。諦めて地道にやるっきゃ無いって事で」

――Interlude out

158 :名無しさん :08/11/28 16:53:09 ID:Jdd5cLPs
久々と思ったらカレー侍w

159 :名無しさん :08/11/28 17:49:53 ID:D39pxG6E
カレだったり真名アッサリ一般人にばらしてたり、マサはフリーダムだなおいw

160 :名無しさん :08/11/28 20:10:08 ID:0j5hfuvS
おお、久々の更新GJ。マサは相変わらずですね。
他鯖の登場も楽しみにしてます。

161 :名無しさん :08/11/29 13:22:01 ID:iGBzoOO/
某代行者「カレーと聞いてきまs……え?教会の監督役は今回要らない?」

それはとにかく、連載再開有難うございます。
原案に携わった者としては、何とか完走まで漕ぎ着けて頂きたい所です。
さて、この最後の会話は不意打ちフラグだったりするのかな……?

162 :名無しさん :08/11/30 23:09:27 ID:zAhF/ZwP
>本スレ
色々大変みたいでお疲れ様です。リアルが安定していないと創作も上手く
いかないと思われるので、まずはじっくりご自愛ください。

管理者と監督役とマスターの三足のわらじを履くアーチャー主従の今後が
楽しみです。苦労しそうだなぁw

163 :名無しさん :08/12/29 15:35:16 ID:14uxm88n
新年が終わる前にもう新作投下しないかな

164 :名無しさん :08/12/30 16:14:09 ID:55X/d2rE
やれやれ、ネカフェからじゃ書き込めないのね
というわけでケータイ経由でお待たせしました!
最近はいろいろ本編も盛況で嬉しいね

http://blog-imgs-18.fc2.com/d/e/n/dentrpg/20081230160631.txt

165 :名無しさん :08/12/30 16:38:03 ID:2kjk5hJA
GJ、付いていきますとも!
来年もよろしくお願いします。

166 :名無しさん :08/12/30 17:44:09 ID:I8/99aoq
GJ! いよいよ皆聖のアイドル、ベレロフォンの登場ですね。
続きを楽しみにしています。よいお年を。

167 :名無しさん :08/12/30 18:10:03 ID:suM9NQVT
油断していたところで投下するとは中々やりおるわ。今回も中々面白かった

168 :名無しさん :08/12/30 19:30:09 ID:sBN3sAqz
GJ!GJ!
新年もよろしく頼みます!

169 :名無しさん :08/12/30 22:15:41 ID:8qVbfjJI
おお、GJです!
待ってましたよ!!ちょっと心配して炊いたのですが、どうやら
お元気そうですね。安心しました。

全サーヴァントが出そろい、いよいよっというところですね。
夏海が可愛かったり、マサが相変わらずだったり、ファーティマが怖かったり
日常シーンだけでも十分面白かったです。それでは、よいお年を!


170 :名無しさん :08/12/31 14:30:46 ID:lmoekW5f
http://blog-imgs-18.fc2.com/d/e/n/dentrpg/20081231140258.txt

まだまだ行くよ!
ではよいお年を!

171 :名無しさん :08/12/31 15:08:13 ID:LLxFf+w4
GJ!
そうか、アレは魔獣になると空を飛べるのか。そりゃアレだもんな、うん。・・・ファティの気持ちがよくわかるわw
よいお年を!

172 :名無しさん :08/12/31 15:56:01 ID:d6GhNI4h
GJ!
まさか今年中に投下されるとは思わなかった。
改めまして、よいお年を。

173 :名無しさん :08/12/31 16:52:03 ID:PlSZ0KQG
アラジン「ちょwww俺の宝具www」

お疲れ様です、久し振りにこっちが見られて狂喜乱舞中。
現在SSだけでも4つ、イラスト含めれば5つの企画が同時進行中か。
うはは、凄ぇwww豊作じゃ〜豊作じゃ〜祭りの用意じゃあ〜♪

FW(この作品):なっちゃん主人公ルート。相方はごーいん。
HIH:みこちゃん主人公ルート。相方はナタきゅん。
RW:第1次水佐波戦争から20年後の、第2次水佐波戦争。
   特定の主人公はいないっぽい?
AS:第2次冬木戦争。一応「原作の原作」で主人公だった
   沙条綾香さんが主人公?相方は敏感侍。
イラスト:現在、公式絵師様が女性サーヴァント集合絵を執筆中。

あぁ畜生、俺にも絵が描けて映像を編集する技術があれば、
OP風MADとか作って支援するのにな……。

良いお年を〜あぁ、一足早いお年玉だったな〜w

174 :名無しさん :08/12/31 18:06:11 ID:0dD8yrAa
そういえば、各企画にOPとかテーマ曲とかBGMとかつけるとしたらどんなのがいいと思う?



175 :名無しさん :08/12/31 19:32:13 ID:PlSZ0KQG
おk、振ってくれるのを待ってたw

俺は水佐波市関連の話を考える時、
作業用BGMは全て「素晴しき新世界(byナムカプ)」にしてる。
某架空戦記風の飛ばせないOPとか作りたいんだが技術的に無理。

元々Fateと言う作品自体が、「スーパー英雄大戦」的な
コラボ企画としての一面があるから、相性は凄まじく良い筈なんだ。
実際新世界MADの中でもFateモノは出来が良い方だし。

176 :名無しさん :08/12/31 23:46:34 ID:9n8xSQvQ
>>170
緩急の付け方が大好きだ
次回も期待してます

177 :名無しさん :09/01/02 16:37:48 ID:XnDF5ZH5
http://blog-imgs-18.fc2.com/d/e/n/dentrpg/20090102153731.txt
あけましておめでとうございます
というわけで書き初め!

178 :名無しさん :09/01/02 17:35:34 ID:S7rBdkn8
あけましておめでとうございます!
そうか、「彼」がいなくてもこういう展開は出来るんだ。
まさに戦場と化している水佐波の現状を見ると、
夏海達にどうにかできるとは、まったく思えないなぁ。
戦争はまさに物量というわけか。

そして、次回は意外な展開で待ち遠しいです。楽しみだなぁw


179 :名無しさん :09/01/02 20:02:40 ID:1JbBEW0J
GJ!
それにしても鼠は本当に厄介な相手だなw

180 :名無しさん :09/01/02 21:28:38 ID:kWvEgw1s
あけおめことよろはぴにゅいや。
作者様お疲れ様です、連日の様に何れかの話が投稿されますねw
今年も水佐波市が活気に満ちてそうで嬉しいお!

ところで。
ちょwwwおまwwwコレ何てバイオハザード?
HIHでも思った事だが、軍勢召喚系は使い所を間違えると、
開催地が余裕で終了するな……。
王の軍勢が固有結界内限定なのも頷ける話だ。

しかし……対人宝具しか持ってないアサシンと、
同じくタイマン能力しか持ってない鉄人さんじゃ
鉄鼠相手じゃ相当厳しくないか?
ジークがいればBGM「Excalibur」で
ちゅどーんとやれるんだろうけどw

病院組もなぁ……みこちゃんが病んデレ化して
近付く奴片っ端から鯖の餌食にしてるとか言う展開だと
完全に死亡フラグだけど……まぁ、そこまで救いのない
展開は流石に無い……か?
次回で優介はファティに反逆する様だけど、
あの鴉はどんな酷い手紙を持ってきたのやらw

今の所の対戦表纏め。
セイバーVSランサー セイバーWIN
ライダーVSバーサーカー 対戦中
アーチャー&アサシン 同盟締結
キャスター 未確認

さて、次回はどうなることやら……?

181 :名無しさん :09/01/03 15:20:49 ID:XM/tPHC3
GJ!
兄さんは元々が陰陽将校だから
結界張ったり、式神使ったり出来るだろう
てか、使ってほしいw
夏海を護りながら炎や雷撃を放つ兄さん
とか格好良くない?


182 :名無しさん :09/01/03 15:54:46 ID:wzRTU7G2
http://blog-imgs-18.fc2.com/d/e/n/dentrpg/20090103151159.txt
それいけ僕らのベレロフォン!
後で破底魔先生に殺されそうだがな俺っ!

183 :名無しさん :09/01/03 16:07:17 ID:w6RhD0mj
お疲れ様です。
マサさん、地味に強くて大好きです。
次の武侠活劇も楽しみにしてます。

184 :名無しさん :09/01/03 16:17:37 ID:qn1cUbPa
マサがここまでやるとは・・・格好良かったです!
GJ

185 :名無しさん :09/01/03 18:42:38 ID:j3gjyIU7
さらに続きがキタ!
っていうか更新が超早いんですけどーww
ちょっとお年玉貰いすぎだろ俺たちw

186 :名無しさん :09/01/03 22:11:24 ID:IoMyJVSo
東西キマイラ殺し対決終了!!
シリアスな場面でもユーモラスな雰囲気がただよう
アーチャー組が良いなーw本領発揮が予想以上に格好良かったです。
それにしても、マサは英霊なのにヘタレすぎだろうw
他がチートすぎるだけで、能力的にはかなり強いのにw

次回はこれ以上にはっちゃけられるとのことで、すごく楽しみです!


187 :名無しさん :09/01/03 23:02:14 ID:LKmzA07N
お疲れ様です。本当にお年玉貰い過ぎだわw

マ、マサが格好良い……だと……!?
普段飄々としてる人に限って、
やる時はやるもんだとは言え……ねぇw

ベレロ「なぁ……一つだけ良いか?
 俺、召喚されてから最短で撃破された上に碌な遺言も残せず、
 オマケにもう一つの宝具は披露すら出来なかったんだが」

うん、液体金属の考案者としては悲しいもんがあるよ。
まぁ、今回はマサに譲って、RWでの出番に期待しませう。

病院での「妙な気配」を見過ごしてしまったアーチャーチーム。
はい、典型的なフラグですよねーw
後書きで「あっちでは良い子ですが」と言ってる辺り、
まさか……イヤな予想が当たってしまうのか!?
具体的に言うと絵師様が描いてくれたイラストの左下辺り!

さて、それ以上に死亡フラグてんこ盛りな、
アサシンチームの行く末は?
いつぞやのキャラ形成期に出てた様な、
陵辱ルートになだれ込んでしまうのか!?

そして、沈黙を保ち続けるセイバーチーム、
敗者復活の可能性を残すランサーチームはどう出るのか?
あぁ、目が離せねぇw

188 :名無しさん :09/01/03 23:19:18 ID:z8Q6nb3u
バ、バカなあっけなさすぎる。お、俺のベレロフォンがwwカウンターキマイラすら使っちゃいないんだぞw

好きな鯖が散るのは悲しいけど、出れただけ良かったよな。っとww

GJGJ

189 :名無しさん :09/01/03 23:44:51 ID:chr1WOlW
ヴラドもあっさりだったしな
まあ、これだけあっさりしていた方がバトルロイヤルっぽくて良い

190 :名無しさん :09/01/04 00:13:11 ID:8GhSP128
猛スピードで鯖が散っていきますねー。
そういえばキャスターはまだ出てきてないんだっけか。

191 :名無しさん :09/01/04 01:48:52 ID:wxef1Gtp
英霊同士の相性の悪さってこんな感じなんだろうなぁとしみじみ思ったww

192 :名無しさん :09/01/04 03:04:23 ID:vCeG3yMJ
マサが何か見せ場に入ってたw

今回のベレロチームは運が無かったというか調子乗っちゃったというか
まあ、そんな原典でも扱いですよね
ベレロは宝具がロマン溢れすぎてて好きだけどさ

そういえば、マサの水破って回収必要なんだっけ?

193 :名無しさん :09/01/04 10:39:01 ID:elV9OT9h
令呪の使い方上手いなぁ

194 :名無しさん :09/01/04 14:29:54 ID:wD5iT+Dq
『当てろ』って令呪使うと、結構無茶な体勢でも、変な軌道で当てたりできるのかな?

195 :名無しさん :09/01/04 16:29:46 ID:mrwA6/1q
http://blog-imgs-18.fc2.com/d/e/n/dentrpg/20090104162143.txt

おこんないでね!

196 :名無しさん :09/01/04 16:44:52 ID:VqPadJSY
おこりませんよ。
楽しく読ませていただきました。

武侠活劇にはならなかったけど、鉄人さん大活躍で安心でした。
話ごとに性格がだいぶ違っていて、読み比べてみると面白いです。

みこっちゃんとキャスターチームは・・・よりにもよって「あの人」ですか。
わりと女性が多いから、ASやrebirth warに呼ばれるよりもはっちゃけそうですね。
マスターともども、今後のヤンデレっぷりにも期待しています。

197 :名無しさん :09/01/04 17:39:22 ID:wxef1Gtp
あぎゃぁぁあああーみこっちゃぁぁああん!ww
彼氏の事故が原因で反転してしまわれた……おまけに精神汚染までw

198 :名無しさん :09/01/04 18:55:09 ID:NzfvCslO
GJ!黒い女性は好きです。
ランサーと組んだら恐ろしいな、まあそれでもナチス組には勝てる気がしないw


199 :名無しさん :09/01/04 20:48:06 ID:v/vMgtvR
お疲れ様です。確率変動ボーナス続行中w
あぁもぅ明日から仕事なのにこの幸せな夢から醒めたくないぃーw

アサシン本来の役割……マスター狙いがこういう形で発揮されるとは。
これで既に2騎が脱落。ランサーチームが復活して来なければ残り4騎。
折り返し地点って所でしょうか。
それにしても無道さん、HIHとはやられ方が対照的過ぎるなぁw

……殺っちまいやがりましたか……(BGM:この世全ての悪)。
ガチに左下な予想が当たるとは思ってなかったので呆然としております。
直接対決になったら、なっちゃんには辛い展開になるだろうなぁ……orz。
しかし本当、鯖戦には弱いのに性質の悪さでは一級品だな、あのお方w

しかしなぁ……ライダーにバーサーカーにキャスターと、
問題起こすサーヴァントが矢鱈多いですなぁw
市民の被害は勿論、魔術師協会に睨まれないかが心配です。
……あ、舞台設定段階では「最終的に島ごと沈没」とかって案も
出てたんだっけw洒落にならねぇwww

200 :名無しさん :09/01/04 21:43:24 ID:ps0w2gXA
GJです!
いやー、最近投下間隔が短すぎです(嬉しい悲鳴)

しかし、あっちもこっちもタチの悪い鯖がどんどん出てくるなぁ。
それが良いんだけどw
アラカンとか中野学校とか、さりげなく設定が深いのがまた、
良い味出してます。
水を得た魚のように、最高の舞台を得た「あの人」は大暴れ
してくれそうだなぁ。

次回も期待してます!




201 :名無しさん :09/01/05 15:27:27 ID:qMfGFmso
http://blog-imgs-18.fc2.com/d/e/n/dentrpg/20090105143731.txt

さすがに連日アップは今日までってことで

202 :名無しさん :09/01/05 17:10:35 ID:+C++XH1W
GJ!!


203 :名無しさん :09/01/05 19:15:56 ID:WUEFuk/8
最強コンビ来たー!
キャスターはやらしい手使ってくるんだろうなぁ
セイバー頑張れぃ!

204 :名無しさん :09/01/05 22:12:48 ID:tl/mzB0p
はっちゃけみこっちゃん、全開ですねえ・・・
精神汚染チームって、何でこんなに無駄に仲良さそうなんでしょうか。

時間的にセイバーチームがまず突入することになるのでしょうが・・・
普通に行けばキャスターは瞬殺でしょうが、どんな手を使ってくるか楽しみです。
まさか、普通の人質作戦なんて使わないだろうし・・・

205 :名無しさん :09/01/06 14:15:21 ID:fpKGzLDe
学生メンバーが悲惨すぎワロタ……

206 :名無しさん :09/01/06 15:58:17 ID:+gC4YRcO
>>205
きっとセイバーが助けてくれる

207 :名無しさん :09/01/07 22:45:28 ID:WJXVBLgI
続きが楽しみです

208 :名無しさん :09/01/08 01:22:10 ID:9/ZO7Cyw
その…下品なんでry
みこと病みすぎワロタw

209 :名無しさん :09/01/11 16:31:11 ID:o843NnIt
続きが気になって狂いそうだ・・・

210 :名無しさん :09/01/12 14:46:37 ID:zjWzYR0L
http://blog-imgs-18.fc2.com/d/e/n/dentrpg/20090112141318.txt

負けられないんだぜ!
男の子だからな!!

211 :名無しさん :09/01/12 15:38:50 ID:T2fD0Bdr
乙!

212 :名無しさん :09/01/12 16:26:23 ID:aQnjZmVy
読みました。
黒みこっちゃん、相変わらずで何よりです。

それはそうと、セイバーチームはどうしたのでしょう?
夏海チームを先行させて様子見でしょうか。

続きを楽しみにしています。
ですが、何よりもそちらの都合が第一です。くれぐれも、無理はなさいませぬよう・・・

213 :名無しさん :09/01/12 17:06:51 ID:2ZjwL54+
よしきてる!さあイケ生粋のドSコンビよ!!w
夏海もフレッツ陵辱だーw

214 :名無しさん :09/01/12 17:28:46 ID:aCjPUIYQ
乙です!
この後にセイバー達が突入してくるのかね?楽しみだぜ

215 :名無しさん :09/01/12 20:46:41 ID:LAGdoUDY
数話分まとめて読んだんだぜ。みこっちゃん無双ハジマタ。
というか一般人はともかく拷問に耐える訓練を受けているであろう軍人すら
骨抜きにするバートリーの拷問術マジどんだけー。

216 :名無しさん :09/01/12 23:23:28 ID:q4hsSf66
お疲れ様です。
書いていらっしゃる作者様ご自身、
続きが気になって気になって仕方ないのが伝わってきますw
でも身体を壊しては元も子もないので、どうかご自愛下さいますよう。

前回コメ書きそびれた分、今回纏めて逝きます。

……真っ黒桜たん+雨生さんちの龍ちゃんとかどんだけぇ〜ッ!?
そっち系のエロゲ展開過ぎて困るぜ!大好物だけど!
この後は、触手責めだったり木馬責めだったり異種交配だったり
亀甲縛りだったり鞭だったり蝋燭だったりする訳ですね、
解りま ―――― ガッ!?(令呪使用による匕首投射クリティカル死)。

済みません、自重します。

セイバーチームは……みこちゃんの台詞で「別のお客様」とあるので、
多分裏口から進入してエリ姐さんと戦闘中なんだろう。
時間的にアサシンチームを待って先に行かせたとは思えないんだ。
……って、まさかもう殺られた後とかじゃないよな?(汗)。
まぁあいつらの事だし流石にそれはないだろうw

にしても本当学生チーム悲惨過ぎwww
命が助かっても一生モノのトラウマだろうなぁorz。

217 :名無しさん :09/01/13 19:51:15 ID:4Q4P1Cap
GJ!
これって夏海どうなったんだw
セイバーチームは216のいう通り対キャスターだろうね。



218 :名無しさん :09/01/19 20:56:39 ID:XZZorBTX
koikoi

219 :名無しさん :09/01/23 23:50:43 ID:tbW+WoW2
どれだけでも待ってますぜ

220 :名無しさん :09/04/19 01:17:29 ID:6+tgFfoi
もう更新はされないんでしょうか?

221 :名無しさん :09/06/07 06:45:17 ID:CXDoa9EZ
あいかわらず更新なしか

222 :名無しさん :09/06/13 15:07:04 ID:z+61yfs8
まだまだ待ってます!

223 :名無しさん :09/06/16 08:32:27 ID:nnVgxExw
こっちは更新なしか

224 :名無しさん :09/07/19 23:43:02 ID:HfQyvtGd
まだまだ待ってるのでご安心を!

225 :名無しさん :09/08/09 12:51:23 ID:HYaih7Op
まだまだ待機中です。

226 :名無しさん :10/01/06 13:31:25 ID:Pr6eHxWz
生存報告だけでもお願いします!
まだまだ待ってますよー!

227 :名無しさん :10/10/06 14:20:44 ID:u9Nrs6wF
まだ待ってるさー

228 :名無しさん :10/10/26 03:45:24 ID:O4/+OnOi
そして誰もいなくなったか

229 :名無しさん :10/11/12 19:07:42 ID:iw4Kkn4x
板違いだが残された希望はssスレの2つだな
新規で始まったやつは最初はひどい最低ssだと思ってたが段々まともになってきて、今ではかなり期待している。

230 :名無しさん :10/11/18 02:49:14 ID:Y6dmRarv
今でも最低SSにしか見えないが
よく考えれば本編からして似たようなもんだった

231 :名無しさん :10/11/26 22:27:12 ID:opWUG0Zw
本編が最低SSと似たようなもの……?

232 :名無しさん :10/12/02 23:16:01 ID:pA7MiYnn
fateは文学(笑)

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